第2話 不審者
「なぁちょっとだけだからいいだろぉ?」
「俺達がお前のこと女にしてやるからよぉ」
男二人が少女を前に気持ちの悪いことをいいながら少女の腕を掴もうとする。
「だから嫌だって言ってるじゃないっ!」
しかし少女は当然、男達を避けるように逃げようとする。
だが男二人は少女の逃げ道を塞ぐようにたちふさがる。
そうすることで、少女の背後は店が立ち並んでいるので簡単に逃げ道がなくなる。
「なぁ、ちょっとだけだからさ」
「ほら、いいから一緒にこいよっ」
少女は必死に抵抗するが、やはりまだ成熟しきってない女の子の体一つで、大の大人二人に叶うわけがなく、あっと言う間に少女の腕が掴まれてします。
「い、いやっ!」
いよいよつぶらな瞳に涙を浮かべて少女は怯えたように引き離そうとするが、力が弱く抵抗することさえ出来ない。
「ほら、こっちだよっ」
少女の手を掴んだ男が少女をどこかへ連れて行こうと引っ張る。
「さぁ、大人しくこっちに…………ぶはっ!?」
「――え?」
腕を引っ張っていた男が突然の握り拳に為すすべもなく吹き飛んでしまう。
あまり突然のことに一緒にいた男も呆然とした様子で、仲間が吹き飛ばされているのを見ている。
「――女の子相手に乱暴してんじゃねぇよっ!」
さらに呆然として隙だらけの男に対しても同じように拳をぶつけた。
「全く、この世界はろくでもねぇな」
男二人を軽くのした俺は内心、わずかにひりひりする拳を押さえる。
今、生まれて初めて人を殴ってしまったがやっぱりこれは殴る方もいたんだな。
神から平均以上のステータスにしてくれると言われていたが、せいぜい副産物程度に思っていたのだが案外中々のもののようだな。
それにしても相手は大丈夫だろうか?
昔から何かあれは考えるよりも先に行動してしまう癖があるのだが、どうやらこれは二十年間引きこもっても治らなかったみたいだな。
これのせいであの時はクラスから浮いてしまって……。
「あ、あの……ありがとうございましたっ」
「えっ?あ、あぁ、うんっ……」
なんて感傷に浸っている場合じゃなかった。
相手にとっちゃ突然訳の分からない男が出てきてきっと困惑しているだろうからひとまず自己紹介といきたいんだけど……。
「あ、えぇー……そ、その……」
やばい、久しぶりの人との会話で言葉が出てこない。
くそっ、引きこもりの弊害がこんなところで出てくるとは……。
「え、えっと?」
ほ、ほら少女も困ってるじゃないかっ。
思い出せ!こういうシーンは今までいっぱい見てきただろ!女の子を助けた後に言うことと言えばっ!
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「――すいませんでしたっ!!」
「えっ!?ちょ、ちょっとっ!」
やってしまった。
あまりにもテンパってしまい、全力でその場から逃げ出してしまった。
すまない名もなき少女。頭のおかしな俺のことは忘れてくれっ。
「ちょ、ちょっと待って下さいっ!!」
「はぁっ!?」
だがしかし少女はその華奢ですらりとした足からは考えられないほどのスピードで追いかけてきた。
しかもステータスで強化されているはずの俺に追いつくほどの速度で。
「はやっ!?」
そうして俺達はしばらくの間、街中で追いかけっこを繰り広げるのだった。
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