第25話 無人
「……ここって私達の家だよね?」
「……そうだね」
変質者集団の一員を追っている内に俺達はいつの間にか家へと戻ってきていた。
しかも驚くことに変質者集団の一人が店の中へと入っていったのだ。
どういうことが状況が理解出来ず俺もエリも混乱する頭で見つめ合う。
「裏口っていえば確か食料庫につながっているんだったよね?」
「うん、そうよ。あそこには食材が保管されているわ」
「……ということは奴らは女性を襲うだけじゃなく、食料泥棒もしている……っていうことなのか?」
まさかさらなる罪を暴くことが出来るとは思ってもなかった。
これは早速リアスさんの役に立てた気がする。
「でも……どうして私達の家なんだろ?この街に住んでいたらパパの名前は絶対に知っているはずなのに」
「……ダインさんってそんなにやばいの?」
エリの言葉に思わず聞き返してしまう。
「う〜ん、私もよく分からないけど。前まで衛兵団専属で教官をしていたみたいで、ママの話だとこの街で一番強いって言ってたわ」
「一番、か……」
「うん。だからパパ相手に悪さしようなんて人はいないと思うんだけどな……」
まさかダインさんがそんなにも強い人だったとは……。
あれ?待てよ?でも、だったらどうして変質者集団はエリを襲ったんだ?
エリの話を信じるなら、ダインさんの娘相手には絶対に手を出そうとしないはず。なのにどうして……。
「とにかく早くいこっ。私達の家に盗みに入るなんて許せないわ!今度こそ私が懲らしめてやるんだからっ」
「そうだね。相手は不法侵入だからもう現行犯だしね」
それに相手が一人なので十分に俺一人でいけるはず。
……まぁダインさんには常に油断と慢心はするなと言われているけど。
「とにかくエリはゆっくり開けてくれ。俺が中をのぞき込むから。もし俺に何かあったらエリはすぐにダインさんを呼んできてくれ。いいな?」
「う、うん、分かった」
エリに指示を出してすぐに扉の前に移動する。
そしてエリに視線を向けて合図を出すとエリがゆっくりと扉を開く。
中は薄暗く、うっすらと電灯が灯っていた。
そこには沢山の食材が保管されており、部屋いっぱいに広がっていた。
「……あれ?誰もいない?」
しかしその中に人影は見あたらなかった。
「うそっ。だってこの先は厨房につながってるから、もしそっちに逃げたらママ達の声が聞こえるはずよ。それに食料庫の中からは鍵がかかってるから開かないはずよ……」
「だけどどこにも人影が…………ん?」
絶対にこの中にいるはず。だからこそ俺は部屋の中を目を凝らすように隅々まで探す。
そこで俺はとある物を見つけた。
「――階段?」
それは床にぽっかりと開いた穴から、下へと伸びる階段があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます