第20話 ファン

「おっ、その本は懐かしいね。まさか僕が作った本がまだ残っていたとは」

「え?」

 リアスさんの言葉を聞いて耳を疑った。

「……え?リアスが作った……本?」

 そしてどうやらエリも初耳のようで、かなり驚愕した表情を浮かべていた。

「うん、そうだよ。あれ?もしかしてエリちゃん知らなかった?」

 リアスさんは当然のように言ってくる。

「全然知らなかったよっ!どうしてママ達はもっと早く言ってくれなかったのよ!まさか近くに小説家がいたなんて思ってもなかったっ!」

「あらあら、てっきり話したことがあると思ったんだけどねぇ。話してなかったのね」

「全然聞いてないよっ!」

 エリはリアスさんが小説家だということにかなり驚いているようで、リアスさんに詰め寄っていく。

「本当に?本当にリアスがこの本書いたのっ!?」

「う、うん。そうだよ。それは昔俺が趣味で書いた奴だ。調子に乗って本にしたのはいいけど、自分で持ってるのは恥ずかしいからダインさん達にあげたんだよ」

 どうやらその反応を見るからにリアスさんが小説家なのは本当のようだった。

 まさかこんなにもすぐに小説家に出会えるなんて……。

「えぇ〜!すごい、本当にリアスがこの小説書いたんだっ!まさかこんなにもすぐに見つけられるなんてよかったねタイチっ!」

「う、うんそうだね。本当に驚いているよ……」

 あまりにも突然なことに反応に困る……というか心の準備が出来てない……。

「ん?僕のこと探していたのかい?」

「そうなんだよっ。タイチがこの小説が好きなんだよっ」

「へぇ〜。それは有り難いね。まさか僕の本にファンが出来るなんて思ってもなかったよ」

「い、いえっ」

 突然近づいてきたリアスさんに僅かに緊張しつつ俺は頭をフル回転させる。

 ど、どうしようっ……!まさかこんなにもすぐに出会えるなんてっ……!な、何を話せばいいんだっ?

 こ、これじゃまるで推しに出会ったオタクじゃないかっ……!

 い、いや状況的にはその通りなんだがっ……。

「?」

 や、やばいっ、あまりにもキョドりすぎて絶対変な奴だと思われているっ……!

 と、とにかく何かしゃべらないとっ。

「あ、あのっ……!」

「ん?どうしたんだい?」

「え、えっと……っ」

 な、ななんでもいいからしゃべらないとっ。

「あ、あのっ!本、すごく面白かったてすっ!」

「うーん、そう言われると少し照れるねぇ」

「い、いえっ!本当に面白かったです!何より主人公の女の子がとにかく可愛くてすごく萌えました!だから是非もっと可愛い女の子が出てくる小説書いて下さいっ!」

 とにかく焦った俺は、早口になりながらも慌てて言葉をぶつけるのだった。

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