第27話 集団
(――くそっ!どうするっ……!)
リアスさんによって部屋の中へ引きずり込まれた俺達は、他の男達の手によって腕を捕まれていた。
この程度の拘束だったらすぐに取り払うことも出来るが、それをしたとしてもどうせすぐに捕まってしまうだろう。
それに隣にはエリもいる。
エリを守りながらここから脱出、もしくは敵を倒す手段はどちらも不可能と言っていいだろう。
それにもしエリがいなくても、俺はリアスさんに勝てる自信がない。
流石に数週間鍛錬しただけで衛兵団長を倒すことは絶対に出来ないだろう。
それ以外にも他の奴ら――リアスさんを除いて六人もいる。
全員の実力が分からない以上、ここで下手な真似は絶対に出来ない。
「全く……まさかタイチ君達がこんなところに来るなんて。やっぱり手伝いなんて頼むべきじゃなかったな」
「しかし、まぁ。こんなにもすぐここにたどり着くなんてタイチ君はやっぱりすごいねぇ」
「これが若さってやつだ」
しかもそこにはリアスさんだけではなく、そこには常連さんである鍛冶屋のおじさん達もいた。
それにざっと見た感じ、他にも見覚えがあるような顔ぶれが見える。
そのどれもが皆、ダインさんの店で見たことがある人達だった。
「ど、どうしてリアスがここにいるのよっ。私達は変質者集団のタトゥーをつけたそいつを追いかけてきたのよっ!だからリアス!早く捕まえてよっ!」
冷静に状況を見ている中、エリはかなり混乱しているようで、困惑したように声をあげる。
「すまないが、僕は仲間を捕まえることは出来ないんだよ」
「な、仲間って何よ……!」
しかも想像通り、リアスさんは変質者集団の仲間らしい。
「それでどうするよリアス?流石にこのまま帰す訳にはいかないだろ?」
「そうだ。いくらダインさんとこの子だとしても、このままじゃあ不味いだろうよ」
鍛冶屋のおじさん達が俺とエリを交互に見る。
「そうだな……」
流石にただで帰れるはずはないか……。
もし、エリに危害が加わるようであればエリのために出来るだけ時間を稼ごう。
最悪、この腰の短剣を使っても構わない。――もし短剣を使えば確実に誰か一人を殺してしまうそうだけど……。
「うん、ひとまず俺達の説明から入ろう。とにかく二人には納得してもらうしかないからな」
「まぁ、そうだよなぁ」
「だけんど二人とも分かってくれるか?特にエリちゃんは女の子だ」
「その時はその時さ。それにタイチ君ならば絶対に我々に共感してくれると思うけどね」
一体何の話をしている?説明?
話を聞く限り、リアスさんは俺を勧誘しているような雰囲気がある。
だが絶対に女の子を傷つけるような集団に入るつもりもないし、共感したくもない。
とにかくエリを助けるための最悪のパターンを覚悟して俺は短剣に意識を向ける。
「――僕達はとある思いの元集まっている集団なんだよ」
そしてリアスさんはゆっくりと語り始める。
「その思いとは女性を崇める集団……つまりタイチ君の言い方で言うならば萌えを主体としている集団なんだよ」
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