第31話 エピローグ 前編
スペルを発動した影の身体がそのまま地面に向かって落ちていく。未來が慌てて走り頭から落ちる影をキャッチする。影は細見で痩せているせいか未來にも普通にキャッチできた。
「影大丈夫?」
「うん」
心配する未來に影は精一杯の笑顔で答える。そしてそのまま未來の力を借りて立ち上がり女の守護神の元に歩いていく。未來は影の身体を支えながら警戒しながら進む。そんな未來に影が呟く。
「大丈夫だよ」
「え?」
未來は影が言っている事がよく分からなかった。確かに女の守護神は自分が信じていた神のスペルがやられて気が動転していた。そして何故か今は生きる希望を失ったのか、気が動転して疲れたのか分からないが膝から落ち女の子座りをして下を向いている。しかしそれが罠かもしれない事に未來は警戒していた。しかし影は警戒すらせず未來と一緒に女の守護神の元に歩いていく。
「お前の旦那は俺が今殺した。選ぶといい。今ここで俺に復讐をするか俺達にこのまま殺されるか。もし復讐を選ぶなら俺は今から一対一で戦う。見ての通り今なら確実にノーリスクで俺に勝てるだろう。俺にもうスペルを使う力は一切残ってない」
影の言葉に未來は自分の耳を疑った。確かに今女の守護神がスペルを使ってきたら誰も何も出来ない。それなら龍脈の力を使って今のうちに剣を生成し首を切り落とせば全てが終わる。
「虫のいい話しだと思う。お前の旦那と部下を殺したのは全て例外なく俺一人だ。俺一人の首で終わらせて欲しい。もしお前が自身の保身を望むなら俺をお前達の拠点に連れて行っていい。だからこいつらを見逃して欲しい」
影の言葉は龍脈の力が十パーセントあるかないかのせいなのかとても弱弱しかった。未來は影が考えなしにこう言う事を絶対に言わない事を信じていた。だから黙って見守る事にする。
「お前が今さりげなく展開してる自爆スペルを使われればこの場にいる全員が死ぬ事になる。発動条件はお前の死だろ? もしお前の旦那の所に一人ではいけないというなら俺が一緒に行く。だから頼む」
影は残った全ての力を使い未來を突き放す。そしてもう一人で立っている事すら無理なのかすぐに片膝をつく。未來は何故この状況で女の守護神をすぐに殺さなかったのかそしてこんな事を言い出したのか理解する。残りの龍脈の力で探知してみると影が言っている事が全て本当なのが分かる。女の守護神はもしかしたら影が戦場に戻ってきた時点でこうなる事を予想していたのかもしれない。もしかしたら影が負けるかもと思ったのか自爆の発動条件を自分の死としていた。仮に未來達が全員で逃げても村の方に向かわれたら瞳の村は大ダメージを受ける。影はあの戦いの中で全てを見抜いていたのかもしれない。巫女である未來以上に瞳の村を大切にしている、そんな気がする。皆の命だけなら他の選択肢もあったはずだ。
「未來……みんなにこの事を伝えて瞳の村まで逃げて」
影は未来に向かって声を出す。
未來は最初警戒心があったので、影に言われる前から女の守護神の元へ向かう時から意識共有で全ての会話と状況をリアルタイムで巫女達に伝えていた。
未來が小さく頷くと影は苦笑いする。影も未來の頷きがどうゆう意味か分かったみたいだ。
「返事を聞こうか?」
影の言葉に女の守護神が顔を向ける。
「影は殺す。巫女達は……」
女の守護神は巫女達を見て少し考える。
「巫女達はいいよ。お前達は逃げな。この男の言う通り私の旦那や部下を殺したのは影一人だ。私はこの男を殺した後お前達がスペル効果範囲から離脱した後旦那の後を追う事にするよ」
女の守護神は何か諦めがついたような表情になる。
そして女の守護神は立ち上がり影の元に向かってゆっくりと歩いてくる。
「ありがとう」
影は女の守護神にお礼を言って未來を見る。
「ごめんね。でもこれで全てが解決するから。今までありがとう」
影はいつもの甘えた声で精一杯の笑顔で言う。
まるで何かの達成感を得たような感じに見える。
女の守護神は影の目の前まで来る。
「おい、そこの巫女。逃げるなら逃げろ。影が死ぬ所はみたくないんだろう?」
未來は状況を受け入れられないのかただ茫然と立っているだけだった。
「敵とは言え、私の旦那と同じようにお前にとって影は生きる全てなんだろう? だったら見ない方がいい」
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