第27話 最恐の転生者の可能性


 詩織とえりか男の守護神に追い詰められていた。


「おらおら、どうしたそんなものか」


 詩織とえりかは近接戦闘が苦手ではないが守護神の剣筋が見極められず苦労していた。


 龍脈の力を使い二人が呪符生成する。


「スペル炎獄の結界」


「スペル感電」


 詩織の言葉と同時に男の守護神は炎でできた結解に閉じ込められる。更に結解を壊そうとする男の守護神の動きをえりかがスペルを使い身体を感電させ止める。

 そして詩織が炎を操作し男の守護神が身動き出来ないように結解内の空間を狭くしていく。勿論狭くすると言っても最終的には炎の牢がどんどん小さくなっていき身体を押しつぶす。そして牢が燃え盛る炎で出来ているので押しつぶす前に身体を焼き尽くす。

 えりかのスペルによって身体が動かせない男の守護神は龍脈の力を使い強引に口だけを動かす。


「スペル零の世界」


 詩織が制御している炎が動きを止める。詩織とえりかが何事かと思い男の守護神を見ると倒れている身体を中心に氷が凄い勢いで出現し全てを凍らせていた。


「スペル結解」


 えりかのスペルにより一定範囲内を全て凍らせる氷が二人を避けるかのように広がっていく。

 ついには凍り付いて動かなくなってしまう。


「これは厄介ね」


「そうね。詩織これをどうにか出来る?」


「すぐには無理ね。えりかはどうにか出来る?」


「なら仕方ないわね。私が合図したら援護をお願い」


「分かった。何をするつもり?」


「『スペル紅蓮の世界』で一掃する」


「分かった」


 二人の巫女は男の守護神に向かって突撃する。


「おいおいお前達巫女の力はそんなものなのか?」


 突撃してくる二人に男の守護神が問う。


「あら? 本当にそう見える」


 そして詩織とえりかが先ほどとは違う方向から交互に突撃し片手に剣を持ち戦う。

 男の守護神の隙を作るため攻撃する。


「お前達本当に巫女か? ここまで剣術が得意な巫女は見た事ないぞ?」


「あら? いきなりお喋りになったわね。こちとら影に負けないように裏では毎日二年間修行してたのよ」


 えりかが男の守護神に切りかかりながら話し注意をひく。


「それでも結局勝てる見込みは未だにないけどね」


 えりかに反撃しようとする男の守護神の注意をひくために今度は詩織が話す。

 男の守護神が標的を詩織に変える。


「あんたが思ってる程私達は守られるだけの女じゃないって事よ」


 えりかが全体重をのせ回転し強力な後ろ回し蹴りを男の守護神に叩き込む。


「くそ……影ですらこの足場には苦戦したのにお前達にはあまり通用しないか」


「何言ってるの? 影はこの世界に来てまだ二年よ? それに比べて私達は生まれてこの世界で生きてきた。そこら辺の適応能力だけは影より上に決まっているでしょ」


 詩織が自信満々に言う。


「スペル連携裁きの矢」


 詩織とえりかが起き上がった男の守護神に連携スペルを叩き込む。

 そのまま突撃し剣で切りかかる。


 流石に身の危険を感じたのが男の守護神がここでスペルを発動する。


「スペル吹雪」


 詩織とえりかの連携スペルで生成された矢が吹雪の冷たい風に触れ凍りついて地面に落ちていく。


 男の守護神は詩織とえりかに向かって突撃し三人が衝突する。高速移動を中心とした剣の切り合いに剣と剣がぶつかり合い火花が散る。二人の巫女の剣筋を見極めたのか男の守護神の顔に余裕が見えてくる。


 詩織と守護神がつば競り合いをしている間に、えりかが呪符を生成しスペルを発動する。


「スペルヘルファイア、スペル茨の結解」


 厚い氷で覆われた地面から太い茨が四本顔をだし男の守護神に向かっていく。

 今度は凍らされないように茨が炎を纏う。


「成程。発想はいいがまだ甘い」


 つば競り合い中の詩織のお腹に突如激痛が襲う。男の守護神が左手で詩織にパンチしたのだ。そしてその場でお腹を抱えうずくまる詩織を守るように茨が男の守護神に攻撃する。


 えりかも慌てて詩織の救出の為動く。


 茨が男の守護神の身体に触れる瞬間茨は纏った炎ごと凍り付く。


「一体何が……」


 えりかの言葉に返事が返ってくる。


「まだ気づかないのかい? このの世界の能力にさ」


 男の守護神の言葉を聞きえりかが周囲を見渡すと茨が根元から凍らせた事に気づく。零の世界は新たに出現した物すら凍らせる事で自分達が凍らないのは体内にある龍脈の力で耐性を作っているからと気づく。そして零の世界が持つ力より龍脈の力が弱い物は徐々に凍り付いてしまう。裁きの矢が凍らなかったのは純粋に時間の問題となる。


「成程。流石本来は巫女五人を同時に相手に出来る守護神ね」


 えりかの言葉に男の守護神が笑う。


「褒めてくれているのかい? ありがとう。よもや敵である巫女に褒められるとは思わなかったよ」


 男の守護神が笑う中えりかが不気味に笑う。


「ちなみにこれを壊されたら貴方はどうするのかしらね?」


 詩織が息を整えたのを確認してえりかが今までにない数の呪符を生成する。

 そして呪符を辺り一面にばら撒く。


「スペル紅蓮の世界」


 呪符が赤く燃えだし効果を発動する。厚い氷がえりかを中心に凄い勢いで溶けていき、今まで凍結されていた炎獄結解と炎をった茨が二人の手に戻る。


「これは影が使った神のスペル……よもやお前も使えたのか……」


 男の守護神が悔しそうに声をあげる。

 ここで詩織が男の守護神のペースを崩しにかかる。


「影は私達が召喚した。そして影は自分の龍脈の回路とは別に私達の龍脈の回路を持ってる。ここまで言えば影の強さの秘密が分かるかしら」


「まさか……そうゆう事か!」


 男の守護神はここまでの戦闘での世界で沢山のスペルを凍らせている。必然的にその分影との連戦もありかなり龍脈の力を使っていることは明白となっている。


「影は人の身でありながら私達五人のスペルを全て使える。勿論私達が使えないスペルも幾つか使えるけどね。逆を言えば影が使えるスペルは私達が使える可能性があると言う事よ」


 詩織はこの瞬間勝負をかける事にする。そしてそれは男の守護神も同じであった。

 後先のことは終わってから考える事にする。

 詩織を中心に先ほどえりかが神のスペルを使った時と同じ枚数の呪符を生成して周囲にばら撒く。


 男の守護神も一気に龍脈の力を増幅させる。


「スペル神の雷」

「スペル神の絶対零度」


 二つの神のスペルが激突する。


 一つは黒い雲を出現させ上空から男の守護神目掛けて落ちる黒く太い雷。


 一つは雷を含めたスペル使用者以外を全て凍り付かせようとするとても冷たい風。


「茨よ私達を囲み攻撃から守りなさい」


「炎獄結解、姿を変え我らを守れ」


詩織とえりかが本来は敵を捕まえ殺すスペルを形態変化させ自分達を守る結解として再構成していく。

 単体攻撃と全体攻撃の神のスペル対決は眩い光を放ちぶつかり合った。

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