第24話 姉が猫カフェにやって来る

ニャー ニャー

「わ…わ…」

休日。

鈴(りん)は最近オープンした猫カフェに来た。


ニャー?

「わわわっ…」

大の猫好きの鈴にとって、念願の猫空間。


ニャ~

「わぁ…」

2時間1000円。安すぎる。


ゴロゴロ ナァーン

「あったか…」

この間 使わなかった1000円をそのままこちらに持ってきたのだ。

ちなみに、無事に姉から髪を切ってもらえた後、姉に1000円を渡そうとしたのだが…

『むしろ10000000000000円払いたい…』

と、切られた鈴の髪を手にしながら恍惚とした表情でつぶやかれたらしい。

(おねえちゃんと時々、正常なコミュニケーションを取れない時がある。)

鈴は特に引いたり怖がったり哀れんだり蔑んだりせず、ただ寂しそうにそう思うのだった。

そんな鈴は入店5分で、

テシテシ フミフミ

「むぅ、うむぅ」

猫ちゃんまみれになっていた!!!!!!!!!!!


入ってすぐ足元に猫。しゃがんだら膝の上に猫。かがんだら背中に猫。重力に負けて倒れ込んだら顔に猫。

「いかがでしょうキャーーーー!!!!!お客さまーーーーーー!!!!!!」

スタッフが慌てて猫をかき集める。


「だ、大丈夫ですかお客さまぁ…」

初めての事態にスタッフも困惑を隠せない。

「も、もふもふでした…」

Q. 大丈夫ですか?→A. もふもふでした。やはり姉妹か、正常なコミュニケーションを取れていない。

会話は成り立っていないが、鈴の無事を確認したスタッフはカウンターへ下がる。

なぜこんなに猫に好かれるのか、それは鈴本人にもわからない。

しかし、鈴は猫ちゃんが大好きなのでwin-winだ!!!!!


ニャー ニャー―

鈴はまたすぐに猫に囲まれた。

「ふふっ、みんなかわい~」

猫ちゃんにメロメロの鈴。猫たちに目線を合わせようとしゃがんだその直後、

ナァー

「わぁ~~!!」

ポテッ

背後から押され、鈴はまた横になってしまった。


そう、横になってしまったのだ。





「ふわふわで、あったか…」

その正体は…

ナァン

姉の涼(りょう)…ではなく、灰色のメインクーンだ!!!!!!

さすがに猫に扮して妹に接触しようとはしなかった!!!!!

体長約1 m、体重約6 kg、もふもふ。

この子もやはり鈴が気になる様子。上に乗っては匂いを嗅いで、鈴の様子を伺っている。

メインクーンからのぞく栗色の毛。その特徴的な髪以外は、手足尾を存分に伸ばし切った猫に覆われて何も見えない。

これはピンチ…


「ふわ…もふ…」

ぴ、ピン…チ…なのだろうか。





ハァ…ハァ…


これは鈴が苦しくて出した息ではない。


ハァ…ハァァァ…


店の外、ショーウインドウから耳に障る息遣い。


ハァァ…シュコーっフハァ…


窓を息で白くさせたり酸素缶で息を整えたりしている不審者は無論…


「ぃ…いもハァ…ぃもぅハァ…い…シュコーー」

今度こそ、鈴の姉・涼だ。


ナォーン

メインクーンは相変わらず鈴の上に乗ったまま、鼻と鼻をくっつける。

「ふふ、なぁに??」

鈴の足にはメインクーンの大きなしっぽ。その尾をゆるりと左右に振られて、よりもふもふを感じる。

「り、りんん…か、かわ…シュコーーかわいシュコーーーーーーーー」

窓の外にも変わらず挙動不審の美女。

その後ろには眉をひそめてスマホに耳を当てる女性。

おそらく、いや間違いなく、通報されている。

ナァ~

「よしよしっ、キミは本当にモフモフだねぇ~」

「ぐぉおおおおおおシュシュコココシュシュコッコシュシュコーーーーーーー」

あまりにも偏差値と酸素濃度が低すぎる空気。

なんなんだこの回は。


「ふ~!楽しかったぁ!!」

90分後、ご満悦フェイスの鈴が店から出てきた。

「…さて、と」

その足は家へ…向かう前に、警察署へ姉を回収しに向かった。

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