第10話 姉がキャンプ場にやって来る
「鈴(りん)ちゃん、お野菜洗いにいこ~」
「うん!」
今日は碁点(ごてん)中学校 第3学年の野外実習。
3年生はこの碁点キャンプ場で1泊2日のキャンプをしている。
今は班に分かれて夕飯のカレー作りに取り組んでいる。
鈴は同じ班で友だちのゆう子と野菜を洗いに水道へ向かった。
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「「キャー!!」」
鈴とゆう子は叫んだ。
そう、早くも叫んだのだ。
なんと、ふたりの目の前に大蛇が現れたのだ。
それは世界最大の蛇:オオアナコンダ。
生息地はアマゾン川・・・しかし碁点キャンプ場は日本だ!
「あ・・・あぁ・・・」
実際、冗談ではない大きさだ。
長さは鈴の約5倍。太さは鈴の約…何倍だ?
オオアナコンダは長い舌をシュルシュルと出し入れしている。
まるで、ふたりを飲み込む準備をしているようだ。
「ゆう子ちゃん…」
「う、ううう」
「り、鈴がおとりになるから、逃げて」
「えぇ?!」
鈴はゆう子を逃がそうとしている。
怖さで震えているにもかかわらず、手を広げてゆう子の前に出る。
「さあ、早く!」
「でも、鈴ちゃ」
「鈴は平気!蛇さん好きだもん!」
猫好きの鈴だが、蛇は苦手だ。
「…すぐに先生呼んでくるから!!」
そのことを知らないゆう子は泣きながら走り出した。
「鈴、美味しくないよ!」
鈴はそう言いながら後ずさる。
しかし、オオアナコンダはどんどん鈴に近づいていく。
「髪の毛いっぱいあるもん!服も着てるもん!だから食べても美味しく―――」
ついに、オオアナコンダは鈴に影を乗せた。
そして、大きな口を開いて、鈴に向かって急降下…!
ザクッ
オオアナコンダの口は地面に到達して、鈴はその場から姿を消した。
姉に釣られて。
「鈴、大丈夫?」
「おねえちゃん…!」
鈴の姉:涼(りょう)は釣り上げた妹を抱きしめる。
オオアナコンダが鈴を飲み込もうとした瞬間、涼が施された釣り竿で木の上に引き上げたのだ。
その状況を理解したかのように、オオアナコンダは木の上にいる姉妹に狙いを定める。
「お、おねえちゃ!蛇さん登ってきちゃう!」
鈴は涙目で涼を見つめる。
「大丈夫だよ、鈴」
「?」
涼は鈴の頭を撫でながら微笑む。
「鈴と一緒に食べられちゃうなら、私は幸せだから」
「おねえちゃん…!」
どう考えても鈴が幸せにならないifを語っていると、周りから特殊部隊がぞろぞろと現れた。
そして、麻酔入りの食べ物を与えてオオアナコンダを眠らせた。
「蛇さん、死んじゃった…?」
「眠ってるだけだよ。さあ、引き続き野外体験を楽しんでおいで」
涼は釣竿を使って鈴と一緒に着地して別れを告げる。
「うん!おねえちゃん大好き!」
ちゅっ
「「「?!?!?!?!?!!?!!」」」
「・・・」
鈴は姉にキスした。
口に。
それを見た約30人の特殊部隊員は、驚き、歓喜し、歌い、踊り、花吹雪を降らせ、カリヨンの鐘を鳴らした。
涼はただ呆然と、キャンプ場に戻る鈴を見つめる。
今の出来事が事実なのか、それとも自分の妄想なのか、それは周りの特殊部隊の反応を見て10分後にわかった。
「鈴の、くちびる…あったかくて、やわらかかった…」
涼は鈴にキスされた瞬間を何度も反芻する。
その間、特殊部隊は結婚式場を建設していた。
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