第2話 姉がいじめ現場にやって来る

碁点(ごてん)中学校、放課後の体育館裏。(再放送)

中学3年生の少女:鈴(りん)は追いつめられていた。

「あんたさー、ゆう太くんから告られたんでしょ?」

「マジ調子乗ってるよね~」

先日、鈴は年下の男子バスケ部員から告白された。

そして現在、そのことが気に入らない同級生の女子5人に囲まれて謎のいじめに遭っているのだ。

「なな子がゆう太くんのこと好きって知ってたよね?」

「知っときながらゆう太くんのこと狙うとかサイテー!」

5人は次々と文句を言ってくる。

鈴はあの部員の名前を今初めて知った。

そしてなな子という同級生も今初めて知った。

「う、うぅう、私、悲しいよぉ」

「あー!ほらなな子泣いちゃったじゃん!!」

「えーん」

なな子という人物は棒読みで泣き始めた。

「えーん、えーっくふw、え、えーんw」

そしてその表情は明らかに笑っていた。


「あ、あの、なな子さん笑ってますけど…」

「はぁ?!」

「これのどこが笑ってるっていうの?!」

「大号泣してんじゃん!!」

「これ以上なな子傷つけるとか…人としてどうなの?!」

鈴の正直かつ正当な指摘に対して、なな子以外の4人が牙を向いてきた。

あまりにも理不尽な状況に、鈴はさらに追いつめられる。

「さあ、精神的苦痛みたいなあれで金出しな!!」

「ほらジャンプしなさいよ!」

「ロンダートでもいいわよ!」

ついに現金(小銭)を要求されてしまった。

鈴は学校にお金を持って来ていない。

電話の際はテレホンカードを使用しているのだ。

今は犬がプリントされたテレホンカードを使っている。

鈴はボーダーコリーが好きなのだ。

しかし実は猫派だ!

「はやく後方倒立回転決めなさいよ!」

「いや!誰か…!」

いつの間にか体操競技レベルの技を要求された鈴は、助けを求めて声を出した。


そう、声を出したのだ。


「さあ早く!じゃないとアタシからメニケリを―――」

「妹」

「え?」

いきなり、いじめ軍団の中から「妹」という声が聞こえた。

「「「「「?!」」」」」

よく見ると、いじめ軍団は5人から6人に増えていた。

その6人目の人物は…

「いもうとぉ!!!!!!!!!!!!!!」

鈴の姉:涼(りょう)だ。

碁点中学の制服を着て、いつの間にかいじめ現場に紛れていたのだ。

「おねえちゃん!」

「さっき、聞こえたんだ。鈴の叫び声が」

セリフは前回と同じだが、今回は間違いなく叫び声だ。

「鈴?今日はどうしたの?ん??」

涼は鈴の頭を撫でながら問いかける。

「えっと、後方倒立回転?をしないと許さないって言われて…」

鈴はなぜ5人に囲まれていたかわからなくなり、直前の記憶を涼に伝える。

「そっかぁ、鈴は今日も可愛いなぁ」

「えへへっ」

涼は鈴の話を聞いているか聞いていないかわからないが、そう返事をした。

そして、いじめ軍団と向かい合う。

「な、なによ!」

「やる気?!」

いじめ軍団は震えながら涼に吠える。

そんな彼女らに向かって、涼は叫び、飛び出した。


「もっとすごいもの見せてあげるよぉ!!!!!!!!!!」


ブワッ


「「「「「?!」」」」」

「し・・・」

「シライ、3・・・」

シュタッ

涼は、後方伸身2回宙返り3回ひねりを華麗に決めて見せた。

「ま、参りました・・・」

なな子も降参した。

「鈴、帰ろっか」

「うん!」

涼と鈴はその場を後にした。

「・・・」

パフォーマンスのために地面に手をついたので、今日は鈴の手を握れない。

涼はそんな絶望を味わいながら家に向かう。

「おねーちゃん、今日もありがとー」

ぎゅ

「?!?!?!?!?!?!?!?!!?」

鈴が涼に抱き着いてきた。

涼はやはり手を使えず、驚きのあまり言葉も出ない。

しかし、顔面はトロトロにとろけていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る