第7話 姉が登校時にやって来る

鈴(りん)は今日も学校に向かって田んぼ道を歩いている。

自宅から学校まで800メートル。街灯も人通りも少ないため、誘拐されないように注意が必要だ。


シャーーー

鈴の前方に、自転車に乗った男が現れた。

鈴のいる方向に向かって自転車を走らせている。

ここは狭い道ではないので、問題なくすれ違うことができる。

はずなのだが…

シャーーー

その男は、スマホを操作しながら自転車をこいでいる。

そのため、鈴の存在に気づいていない。

シャーーー

男が運転しているのはBianchi(ビアンキ)のクロスバイク。

一般的な自転車よりも速いスピードで鈴に迫っている。

このような場合、鈴は大抵、縁石の上に乗って自転車を避ける。

しかし、今の鈴は…

ニャーン

「あ!猫さん!今日は本物!」

猫さんに夢中だ!!!!!

「かわい~、だっこしてもいいかなぁ」

自転車はもう間もなく鈴に直撃する。

ニャー

しかし双方ともお互いの存在に気づいていない。

「あったか~い!猫さんふわふわだぁ~!」

だが鈴と猫さんは心が通じ合っている!!!!!


ガシャン


突如、鈴の前にガードレールが現れた。

その横にジャンプ台と、

「妹」

「おねえちゃん!」

姉の涼(りょう)が現れた。

そして次の瞬間、


「うわああああああああああああああああああ!?!!!!!?」


男が自転車に乗って空を飛んだ。


「?、いま何か聞こえたよ」

涼は鈴の目の前に立って、田んぼに落下した男を隠した。

「カラスだろう。さあ、猫さんとさよならして学校に行きなさい」

「はぁい。バイバイ、猫さん」

ニャーオ

猫さんはトコトコと縁石の上を歩いていった。

「じゃあおねえちゃん、いってきます!」

「うん、いってらっしゃい。自転車に気を付けるように」

「うん!」

鈴は碁点(ごてん)中学校に向かって、また田んぼ道を歩いていった。

涼は鈴の背中を見送りながら、ガードレールとジャンプ台を回収して大学へ向かった。

これが彼女たち姉妹の日常だ。





ポチポチ

「あ、もしもし松本さん?松本さんの田んぼ荒らされてますよ」

『はぁあ?!なんだって?!』

「男が自転車で苗をぐちゃぐちゃにしちゃってます。ああ、逃げようとしてますけど大丈夫ですよ。彼のスマホ、拾ったんで」

妹に悪影響を及ぼす人間を涼が徹底的に制裁するのも、いつものこと。

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