概要
その音が出会わせたのは、至上の美を紡ぐ傷だらけの指先。
傷付けることを恐れて、それでも翼を広げて翔けた……ここにいる、と伝えるために。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!なにもかもが美しく心地よい
1話目からまず文章の美しさに惹きつけられ、本当はやらねばならないことがあったのも忘れて最後まで一息に読み終えてしまいました。
読みやすい、ではなく、文章が次から次へと流れ込んでくるかのよう。
読むだけでも心地よかったですが、その内容がまた美しかった……!
身分差のある純愛物語ですが、普段、私自身は基本的に恋愛物は避けてしまう傾向があります。
面白い作品もあるので読みますが、ベタベタ感やしつこさを感じて途中で脳が胸焼け?を起こしてしまうことも多い。
『星を紡ぐ手』は、締め上げられるような切なさも、包みこむような優しさもあり、しつこさやベタベタ感はなく、最後までキリリとした空気感…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しき調べから幕をあげる 懐かしくも新しき《異類婚姻譚》
なんて美しく、愛おしい御伽噺でしょうか。
トントンカラリ、トンカラリ……
そんな美しき調べに惹かれて機織小屋を訪れた龍神族の皇太子が出逢ったのは機織部の幼い娘。彼女は不思議な調子で歌いながら、一心に機を織り続けていた。その娘の純朴なすがたに胸をつかれた皇太子はみずからの素姓を隠して彼女との逢瀬を繰りかえすようになる。
機織小屋は男子禁制。戸を隔て穏やかに喋るだけ。
けれども彼のこころは満たされていった。
しかしながら次期龍王と機織部の娘。横たわるのは身分の差だけではない。それぞれの非業の宿命が絡まりあい、運命はさだめられた悲劇にむかって動きだす――
何処か懐かしい調べから幕をあげる清ら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!響く機(はた)の音と機織歌、心震わせたのは……
トントンカラリ、トンカラリ。
『機織り』という言葉を聞いたとき、『鶴の恩返し』という昔話のタイトルが頭に浮かんでいました。
ですが、今日からは違います。
『機織り』といえば本作『星を紡ぐ手』、トントンカラリ、トンカラリ。これが頭に浮かびます。
宮中の白洲の向こうに機織りをするためだけに建てられた機織部と呼ばれる小屋がありました。ここで少女がたった一人、龍王一族に捧げるための織物をするのです。
ある星の美しい夜、一人の少年が白洲に降り立ちました。内履きのまま。「わざと叱られるような悪いことをしでかす」というすさんだ思いで。
そんな彼の耳にふと飛び込んできたのはいつもの音……じゃない? …続きを読む - ★★★ Excellent!!!紡いだ想いは形をなし、二人を温かく包み込む。
トントンカラリ、トンカラリ――。
それが始まりの音。軽やかな音。一年中機織りの音が絶えないその部屋からは、悲しく重たい音が響いてくる。
それはまるで冷たい牢獄のような……。
でも、それはこの世の安定のために必要なこと。とても、とても大切な役目。ただ、それに全てをささげることの意味。それには悲しみが含まれていた。主人公はそう感じます。
でも、織っている少女の歌と機織りの音はそうではなかった。一つ一つに思いを込めつつ織りなすもの。思いを糸に、心から。
そして、二人は言葉を交わす。ただ、そこには閉じた扉と隔たりがありました。
また、主人公は次第に少女に惹かれていくけど、彼にはそれを許さ…続きを読む