響く機(はた)の音と機織歌、心震わせたのは……

トントンカラリ、トンカラリ。
『機織り』という言葉を聞いたとき、『鶴の恩返し』という昔話のタイトルが頭に浮かんでいました。
ですが、今日からは違います。

『機織り』といえば本作『星を紡ぐ手』、トントンカラリ、トンカラリ。これが頭に浮かびます。


宮中の白洲の向こうに機織りをするためだけに建てられた機織部と呼ばれる小屋がありました。ここで少女がたった一人、龍王一族に捧げるための織物をするのです。

ある星の美しい夜、一人の少年が白洲に降り立ちました。内履きのまま。「わざと叱られるような悪いことをしでかす」というすさんだ思いで。
そんな彼の耳にふと飛び込んできたのはいつもの音……じゃない? 何かが違う。とっても楽し気。なんだろう……?

近づいた彼の耳に聞こえてきたのは甘く幼い少女の歌声、機織歌。
そして彼が目にした彼女の姿は。

彼の正体、身分を我々読者が知ったとき、「ああ」と思わず嘆息をもらしてしまいます。機織りに勤しむ彼女との甘く優しくそして切ない時が流れていくのです。

彼の想いは、彼女の想いはお互いに届くのか?

とっても美しい恋物語、耳をそばだて音までをも楽しませていただきました。
まさに至極の一篇。
この出会いに感謝。

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星を紡ぐ手

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