紡いだ想いは形をなし、二人を温かく包み込む。

トントンカラリ、トンカラリ――。

それが始まりの音。軽やかな音。一年中機織りの音が絶えないその部屋からは、悲しく重たい音が響いてくる。

それはまるで冷たい牢獄のような……。

でも、それはこの世の安定のために必要なこと。とても、とても大切な役目。ただ、それに全てをささげることの意味。それには悲しみが含まれていた。主人公はそう感じます。

でも、織っている少女の歌と機織りの音はそうではなかった。一つ一つに思いを込めつつ織りなすもの。思いを糸に、心から。

そして、二人は言葉を交わす。ただ、そこには閉じた扉と隔たりがありました。

また、主人公は次第に少女に惹かれていくけど、彼にはそれを許さない理由がある。そして、少女にも変化が起きる。

そこから先は皆さんで確かめてください。

荒々しい水が、豊かな実りをもたらすような雰囲気と、静けさの中で語る二人の想い。

人の形となる上で必要なもの、それは確かにお互いを思う心なのかもしれません。

とても温かな気持ちになれました。

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