1話目からまず文章の美しさに惹きつけられ、本当はやらねばならないことがあったのも忘れて最後まで一息に読み終えてしまいました。
読みやすい、ではなく、文章が次から次へと流れ込んでくるかのよう。
読むだけでも心地よかったですが、その内容がまた美しかった……!
身分差のある純愛物語ですが、普段、私自身は基本的に恋愛物は避けてしまう傾向があります。
面白い作品もあるので読みますが、ベタベタ感やしつこさを感じて途中で脳が胸焼け?を起こしてしまうことも多い。
『星を紡ぐ手』は、締め上げられるような切なさも、包みこむような優しさもあり、しつこさやベタベタ感はなく、最後までキリリとした空気感と美しさで、恋愛物のもどかしさや切なさを読ませてくれる素晴らしい作品でした。
最終話は、それまで感じた様々な感情をギュッと圧縮したものを天に放つような感覚でした。
ああ、読んでよかった……。
素晴らしい作品を書いてくださった雪白楽様に感謝します。
この感動や読後感を、多くの方に味わっていただきたいです。
なんて美しく、愛おしい御伽噺でしょうか。
トントンカラリ、トンカラリ……
そんな美しき調べに惹かれて機織小屋を訪れた龍神族の皇太子が出逢ったのは機織部の幼い娘。彼女は不思議な調子で歌いながら、一心に機を織り続けていた。その娘の純朴なすがたに胸をつかれた皇太子はみずからの素姓を隠して彼女との逢瀬を繰りかえすようになる。
機織小屋は男子禁制。戸を隔て穏やかに喋るだけ。
けれども彼のこころは満たされていった。
しかしながら次期龍王と機織部の娘。横たわるのは身分の差だけではない。それぞれの非業の宿命が絡まりあい、運命はさだめられた悲劇にむかって動きだす――
何処か懐かしい調べから幕をあげる清らかな恋の物語を読み終え、いまその麗しい余韻に耽溺致しております。
異類婚姻譚。といっても近頃流行のものとはひと味違い、もっともっと元祖の、日本神話に近いものを感じます。あるいは昔話。ふたりのあいだに越えてはならない境があるところは、どこか鶴の恩返しなどを彷彿とさせます。
神聖な恋物語を、是非ともトンカラリと紐解いてみてください。
きっと、素敵な読書時間となることでしょう。
トントンカラリ、トンカラリ。
『機織り』という言葉を聞いたとき、『鶴の恩返し』という昔話のタイトルが頭に浮かんでいました。
ですが、今日からは違います。
『機織り』といえば本作『星を紡ぐ手』、トントンカラリ、トンカラリ。これが頭に浮かびます。
宮中の白洲の向こうに機織りをするためだけに建てられた機織部と呼ばれる小屋がありました。ここで少女がたった一人、龍王一族に捧げるための織物をするのです。
ある星の美しい夜、一人の少年が白洲に降り立ちました。内履きのまま。「わざと叱られるような悪いことをしでかす」というすさんだ思いで。
そんな彼の耳にふと飛び込んできたのはいつもの音……じゃない? 何かが違う。とっても楽し気。なんだろう……?
近づいた彼の耳に聞こえてきたのは甘く幼い少女の歌声、機織歌。
そして彼が目にした彼女の姿は。
彼の正体、身分を我々読者が知ったとき、「ああ」と思わず嘆息をもらしてしまいます。機織りに勤しむ彼女との甘く優しくそして切ない時が流れていくのです。
彼の想いは、彼女の想いはお互いに届くのか?
とっても美しい恋物語、耳をそばだて音までをも楽しませていただきました。
まさに至極の一篇。
この出会いに感謝。
トントンカラリ、トンカラリ――。
それが始まりの音。軽やかな音。一年中機織りの音が絶えないその部屋からは、悲しく重たい音が響いてくる。
それはまるで冷たい牢獄のような……。
でも、それはこの世の安定のために必要なこと。とても、とても大切な役目。ただ、それに全てをささげることの意味。それには悲しみが含まれていた。主人公はそう感じます。
でも、織っている少女の歌と機織りの音はそうではなかった。一つ一つに思いを込めつつ織りなすもの。思いを糸に、心から。
そして、二人は言葉を交わす。ただ、そこには閉じた扉と隔たりがありました。
また、主人公は次第に少女に惹かれていくけど、彼にはそれを許さない理由がある。そして、少女にも変化が起きる。
そこから先は皆さんで確かめてください。
荒々しい水が、豊かな実りをもたらすような雰囲気と、静けさの中で語る二人の想い。
人の形となる上で必要なもの、それは確かにお互いを思う心なのかもしれません。
とても温かな気持ちになれました。