【男の娘】といつ【概念】の解釈は人それぞれだと思うけれども、個人的には「中性的、あるいは女子寄りの男の子を【見ている側】の中に生まれる概念」である(そのパターンが多い)と考えています。
なので、男の娘側を主人公にして、しかも元からあった【そういう傾向や衝動】ではなく、【明確な目的のための手段】として女装をするというストーリーを見て、「男の娘というか女装男子という感じだな」と思っていました。
が、
ラストまで読み終えたところ、そこには見事な一人の男の娘が誕生していた。恋を飛び越えた愛ゆえに。
BLと男の娘の狭間に漂う、この作者さんならではの作品です。
そのどちらの要素が濃いかも含めて、観測してみてはいかがでしょうか?
多分この作品は分類としてはBLといえる。
でもそう言い切ってしまうには、後輩として尊敬する大事な先輩への気持ちが丁寧に、だけどコミカルに綴られていて、人が人に惹かれていくのを描いていると言った方がしっくりくるかもしれないと思った。
尊敬する先輩が付き合う女の人に心配する後輩くんは、何とか今の彼女と別れさせる算段をする。
物語はそこから始まるのだが、後輩くんが考えた方法がもう普通じゃない。
のっけから引き摺り込まれ、読み易い文体と、所々に散りばめられている秀逸の言葉に夢中になってしまった。
最後はこれからの二人のあれこれを想像させてくれるような形で終わるのだが、この二人はいつまでも仲良くあるのだと思う。
人を思う時、一番大事にしなければいけないのは何か。
この二人はそれを持っている。
正直に言うと、私はBLをあまり読まないのだが、この二人は許せてしまう。
むしろ頑張れとエールさえ送りたくなる。
多分それは、人としての感情が丁寧に描かれているからだと思う。
よくこの短い話の中に、ここまでの完成させた物語を描いたものだと思い、実は二度読んだ。
無駄なものがひとつもなく、しかもコミカルの中に感動がある。
詩一さんの作品はいくつか読んではいるけれど、毎回他にはない驚きがある。
今回もそれを堪能させてもらった。
素敵な話をありがとうございます!
最初にタイトルを見たとき、「先輩(♀)」と「後輩(♂)」の話かと思った。
だが、違った。
これは世にいう「びーえる」である。
主人公の輝斗(♂)には、尊敬する先輩(♂)がいる。
ところが、この先輩には女を見る目がまるでない。貢がされ、浮気までされている有様だ。
見かねた輝斗は、先輩とその彼女を別れさせるべく奮闘する。
――男の娘になって。
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作者は、少し前にファンタジックな百合を投稿したばかり。
『瞳の魔女と空輝の歌唄いシャシエ』
https://kakuyomu.jp/works/1177354054897250191
それが今度はBL。
作風の幅広さに驚かされるばかり。
読み始めると、ポップな文体が楽しい。
テンポも良く、さくさくっと読み進めることができる。
「恐ろしいことに僕はとてつもなくかわいかった。」
この一行目。
もう、冒頭からアクセル全開である。
女装がバレないかとハラハラする緊張感。
少しずつ育ってゆく想い。
作戦は成功するかのように見えたが、思わぬ問題が発生し……。
「これ、Twitterのプロモーション漫画で流れてきたら絶対気になっちゃうやつ!」
と思いながら読み進めた。
柚香ちゃん(♂)の健気さは、そこらへんの女の子よりも、よっぽど可愛い。
先輩(♂)の放って置けない感じも良い味を出している。
そして、物語はロマンチックな雰囲気に。
ぜひ最後の最後まで、展開をお見逃しなく!
(*˘3˘)☆(˘ε˘*)
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BLといえば、以前こんな話を聞いたことがある。
BLは「男同士の禁断の愛」という耽美さやストイックさが良いのだと。
そのときは「なるほど」と納得したものだが、それから時代は移り変わった。
性的マイノリティの方々の活動により、世界の価値観は大きく変わった。
いまや、「性別に関係なく、愛する相手と一緒にいることが幸せ」だという考え方は世間にかなり浸透してきていると感じる。
それにより、BL作品の見せ方も変わってきているのではないかと思った。
私が今レビューを書いているこの作品には、「男同士なのに恋愛関係になるなんて、おかしい」などということは書かれていない。
互いを思いやり、相手のために動き、相手を愛おしく感じる。
それが「愛」なのだと。
まさに新時代の感性で書かれたBLなのだなぁと思った。
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それにしても、作者は男性らしいが、作中で登場する女装やらメイクやらの描写があまりにも具体的で、ちょっと引……いや、いっぱい調べててすごいなって思いました!
ついこういう考え方をしてしまうのも、まだ偏見が残っているからか。
これからの時代、「男性なのに」とか「女性だから」とか、そういうのは抜きにして。
もっと多様性を受け入れ、おおらかに生きたいものだと思った。
大好きな先輩は致命的に女を見る目がない。
今回も悪い女に引っ掛っている。
その女の浮気現場の写真を見せても、
「何か事情があるんだろう」
と、言って怒りもしない。
だから僕は決意した。女装して先輩に近づき、相手の女に先輩も浮気しているのだと誤解させる為。
そして、先輩がフラレる為に――!!
果たしてその結末とは――如何に‼️
お読み下さい‼️
この作品は、私のTwitterのTLに流れて来て、タイトルに引かれて、一気読みしてしまった作品です! 凄い吸引力のあるタイトルでした! 短編なので、さくっ、と読めてしまいました!