新時代のBL☆先輩のために一肌脱ぎます!(そしてワンピを着ます♪)

 最初にタイトルを見たとき、「先輩(♀)」と「後輩(♂)」の話かと思った。
 だが、違った。
 これは世にいう「びーえる」である。

 主人公の輝斗(♂)には、尊敬する先輩(♂)がいる。
 ところが、この先輩には女を見る目がまるでない。貢がされ、浮気までされている有様だ。
 見かねた輝斗は、先輩とその彼女を別れさせるべく奮闘する。
 ――男の娘になって。

   ***

 作者は、少し前にファンタジックな百合を投稿したばかり。

 『瞳の魔女と空輝の歌唄いシャシエ』
 https://kakuyomu.jp/works/1177354054897250191

 それが今度はBL。
 作風の幅広さに驚かされるばかり。

 読み始めると、ポップな文体が楽しい。
 テンポも良く、さくさくっと読み進めることができる。

「恐ろしいことに僕はとてつもなくかわいかった。」
 この一行目。
 もう、冒頭からアクセル全開である。

 女装がバレないかとハラハラする緊張感。
 少しずつ育ってゆく想い。
 作戦は成功するかのように見えたが、思わぬ問題が発生し……。

「これ、Twitterのプロモーション漫画で流れてきたら絶対気になっちゃうやつ!」
 と思いながら読み進めた。

 柚香ちゃん(♂)の健気さは、そこらへんの女の子よりも、よっぽど可愛い。
 先輩(♂)の放って置けない感じも良い味を出している。

 そして、物語はロマンチックな雰囲気に。
 ぜひ最後の最後まで、展開をお見逃しなく!
 (*˘3˘)☆(˘ε˘*)

   ***

 BLといえば、以前こんな話を聞いたことがある。
 BLは「男同士の禁断の愛」という耽美さやストイックさが良いのだと。
 そのときは「なるほど」と納得したものだが、それから時代は移り変わった。

 性的マイノリティの方々の活動により、世界の価値観は大きく変わった。
 いまや、「性別に関係なく、愛する相手と一緒にいることが幸せ」だという考え方は世間にかなり浸透してきていると感じる。

 それにより、BL作品の見せ方も変わってきているのではないかと思った。
 私が今レビューを書いているこの作品には、「男同士なのに恋愛関係になるなんて、おかしい」などということは書かれていない。
 互いを思いやり、相手のために動き、相手を愛おしく感じる。
 それが「愛」なのだと。

 まさに新時代の感性で書かれたBLなのだなぁと思った。

   ***

 それにしても、作者は男性らしいが、作中で登場する女装やらメイクやらの描写があまりにも具体的で、ちょっと引……いや、いっぱい調べててすごいなって思いました!

 ついこういう考え方をしてしまうのも、まだ偏見が残っているからか。
 これからの時代、「男性なのに」とか「女性だから」とか、そういうのは抜きにして。
 もっと多様性を受け入れ、おおらかに生きたいものだと思った。

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