第6話 口は災いのもと
「おにいさん!朝ですよ~。」
目を開けると、ぼんやりと誰かの顔が映った。
彩香だ。
彩香が僕の視界にいた。
やれやれ、眠ってしまっていたのか。
六畳の部屋。三人で住むには狭そうだ。布団を敷いたら半分が埋まってしまうのだから。
僕は朝の眠気を覚まそうと、窓を開けて伸びをする。
窓を開けてみて驚いた。自分が来ている建物の古さに。
築何十年なのだろう、
そして景色がほとんど見えない。日が当たらないのだ。隣の建物が高くて。
「この家条件悪すぎないか?」
思わず言ってしまった。というか言わずにはいられなかった。
「でも、安かったんだよ?」
彩香は答える。
「日当たりとか絶対良くないよね?」
「それはそうなんだけど…。」
「女の子なら洗濯物の乾きとか、住みやすさとかを重視するべきなんじゃ。」
そこまで言って俺は口を止める。
なぜなら、彩香が泣きそうな顔をしていたからだ。
「おにいさん。」
里乃が彩香の前に立って言った。
「この家は私たちが頑張って働いて、やっとのことで手に入れた安心して住める家なのですよ。」
賃貸だけどね、と付け加えた。
「彩香を泣かすなんてサイテー!」
きららが怒ってやってくる。
「とりあえず出ていって!」
僕は家から追い出された。
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