第3話 夢を聞かせて

「彩香と里乃か。よろしくな。」


「はいっ!」


「よろしくなのですよ~。」


 親しみやすそうな子たちだな。僕はあまり話すのが得意な方ではないから、こうしたおとなしめの子の方が話しやすい。気を使わなくていいって感じがして。


「二人とも大変だな、夜遅くまで働いて。」


「えへへっ。少し疲れちゃうことはあるんだけどね、私たちには夢があるの。」


「そうなのです。すごくおっきなおっきな夢なのですよ~。」


「どんな夢なの?おにいさんも聞きたいなぁ。」


「私たちの夢は、普通の生活を手に入れて普通のところで働いて普通に結婚することです!」


 彩香は笑顔で力強く答えた。


「普通の生活とかって普通に生きてたら普通に手に入るものじゃないの?」


と言うと、彩香は俯きながら


「普通ってなかなか手に入れることができないんですよ。普通より下の人たちは、一生懸命頑張ってそれでもつかむことはとっても難しくって。私たちの友達にも頑張り切れず堕ちていった人もいて…。」


「なのです。だから、つらくても苦しくても痛くてもあきらめちゃダメなのです。」


 そういって、里乃は袖をまくり、腕を見せてくれた。

 そこには、大きな黒いあざがくっきりと。

 僕は何も言うことが出来なかった。





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