アンダーワールド

こゆき

第一章 貧困少女

第1話 少女との出会い

 少女の吸ったたばこの煙が僕にかかる。

 正直、僕はあまりそれが好きではない。

 少しだけ睨むように少女を見ると、少女は「悪いな。」と笑いながら言った。


 金髪でどこか一世代前のギャルを彷彿とさせる格好をした少女。

 吸い終わったと思えば、箱からまたたばこを取り出し先端に火をつける。

 また吸うのかよ。なんて思っている僕のことなど気に掛ける様子もなく気持ちよさそうに煙を吐き出した。


プハー。


 気持ちよさそうな顔をしてるな。

 僕はわけもなく少女を眺めていた。すると少女は僕に気づきこう言った。


「なんか用?あんた、あたしをさっきからじろじろ見てるみたいだけど。」


 特に意味はない。なんとなく足を休めようと座った公園のベンチに少女が座ってきたのだ。薄汚れたベンチに男女二人。どことなくロマンチックな雰囲気がその場に僕を縛り付けていた。


「何でもないよ。嫌だったか?」


 僕は優しく話しかける。少女の見た目が少し怖そうにみえたことと、そして。

 タバコを吸う前の表情が少し寂しげで、何かを抱え込んでいるかのように感じたからだ。

 本来なら、若い子は喫煙なんてしない方がいいよなんて言うべきなのだろう。

 けれども。

 正しいことを言うことだけが答えじゃない。


「別に。それこそあんたの方が暗そうな顔してるけどさ。」


 少女は僕の顔を見てニヤリと笑った。

 少女なりの気遣いなのだろう。


「大丈夫さ。」


「ふーん。まいっか。18のあたしじゃむずそーだしね。」


 18?

 じゃあたばこは…!


「たばこ?それくらいいいだろ。これ吸ってる時だけ気が休まるんだからよ。」


 それならいいか。タバコ吸って前向いて頑張れるなら、悪くないと思う。


「ま、きららなんていうあたしの名前とはかけ離れちゃうんだけどね。」


 ケタケタ笑いながら、少女は言った。


 きらら。いい名前じゃないか。


「ところで、きららちゃんこんな遅くまで出歩いちゃ…。」


「うっせーな。あんたはあたしのなんなんだよ。正義屋さんみたいなこといってさ。こっちにはこっちの事情があんの。」


「事情?」


「そ。あたし風俗で働いてんの。あんたも来てみる?」


 そう言うと、きららは店のチケットの裏にサササとペンを動かした。

 待ち合わせ。24時30分。

 なぜか閉店時間の30分後に。













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