第5話 選べない

 きららは驚きながら、少し頬を緩めた。


「そう言ってくれるとこっちも嬉しいよ。」


 思わずこっちまで頬が緩む。

 最初会った時よりもずっと接しやすい少女へと変わっていた。

 僕はきららを誤解していたんだ。

 そう思うと、少し罪悪感が出てきた。


「あの、いい雰囲気のところ悪いんだけど…。」


 彩香が申し訳なさそうな顔で、僕の顔を見上げている。


「何かご飯を食べたいです。」


 まだご飯を食べていなかったのか。

 みんな夜遅くまでお仕事頑張っていたんだもんね。

 なら俺が作らないとな。


「まってろ。今から材料買ってきて作るから。」


「マジで!?」

「いいんですか?」

「嬉しいのですよ~。」


 三者三葉の反応。


「それくらい任せろって。」


 俺は強気な言葉とともに家を出る。

 向かうのは最寄りの24時間営業のスーパーマーケット。

 そこでスパゲッティの麺とトッピングを一通り購入。

 それとインスタントの味噌汁。

 帰ってさっさと作ろう。


 家に着くと午前1時をまわっていた。

 すっかり遅くなってしまったな。

 三人は夢の中に入りそうな眠たい顔で僕の帰りを待っていてくれた。


「「「おかえり~」」」


 さっそく料理にとりかかる。

 1000gの麺を鍋に投入し茹で、その合間の時間でインスタントの味噌汁を準備して食卓に並べる。

 洋と和。全くのミスマッチだ。


「出来たよー。」


 僕の声で三人がさっきまで眠かったのが嘘のように目を開き近寄ってくる。

 さあ、食べようよ。


 茹でたスパゲッティにミートソースとトッピングを施し、取り分けた。

 取り分けた瞬間、三人はがっつくように食べ始める。


「そんなにおなか減ってたのか!」


「たりめーじゃん!金ねえんだからよ!」

「おなか一杯食べれるなんて幸せなのですよー!」

「ほんとにうれしい!でもまた太っちゃうかも。」


 幸せそうな三人の顔。

 ところで一つ疑問に思ったことが。


「彩香ちゃん、太りそうってどういうこと?」

「それは貧しいと食べるものを選べないから、安いファストフードになっちゃうのです。私みたいに太りやすい子だとすぐこんな感じでお腹が…。」


 彩香は自分のお腹をつまみ、ため息を漏らす。


「でも、ぽっちゃりしてるのが彩香らしいっつーか。気にしすぎッての!」


 きららが彩香のお腹の肉をつまみながら笑う。


「ちょ、ちょっと!やめてよ!」

「やめな~い。」


 彩香は抵抗するが、きららはそれにかまう様子はない。


「彩香はすごく甘えやすいから助かるのです。まんまるお腹を抱きしめて♡」

「こ、こらー!」


 里乃も彩香をいじる。

 午前2時を回っているにもかかわらず。


 三人の楽しそうな姿を見ているうちに、少しずつ記憶が薄れ、夢の中へと消えていった。

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