第20話 温泉ヘようこそ②

「待て待て待て待て。いきなりなんてことを言いだすんだよ!」

「え?あたしなんか変なこと言ったか?」

「冗談でも男にそんなこと言っちゃだめだぞ。」

「わーってるよ、あんたにしか言わないからさ。」


 …………。

この時の僕はどんな顔をしていたのだろう。

そう言ってくれたことがうれしかった。


「俺が洗ってもいいのか……?」

「うん、あんたに洗ってほしいの。」


わかった。そこまで言うのなら。

僕は彼女のそばにそっとかがんだ。


「分かった。」


タオルを手に取り、肩を包むようにそっと乗せる。

タオル越しに伝わってくる体温はとても温かかった。


「緊張してるのか?」

「ちょっとだけね。」


細い背中を少しずつ下っていき、お尻へとたどり着く。


「前もお願い!」

「前は自分でやってくれよ!」

「ぐぬぅ……。」


「二人とも何してるのー?ずるいよー!」


里乃と彩香もいつの間にかそばに来ていた。

助かった。


「そうだ、二人も洗ってあげよう!」

「ほんとですか!?」

「嬉しいのですー。」

「あ、ずるいぞー!私前洗ってもらってないもん!」


怒るきらら。


「大丈夫二人とも後ろしか洗わないって!」

「でも!あたしだけ特別じゃなかったのかよー。」


ふてくされた少女を後に僕は彩香の体を洗う。


「大きな背中なのですー。」

「ちょっとおにいさん!?」

「違う俺じゃない里乃だ!」

「人のせいにするのは良くないのですよー。」

「ずるいあたしも混ぜろ!」

「集まるな集まるな、こんな滑りやすいところでわちゃわちゃすると……!」


ドタッ

ドスン!


僕らのうちの誰かが足を滑らせたようで4人そろって大きく転倒。

僕は頭から落ちるのを避けようとそばにある何かを掴む。

あれ、柔らかい感触……?

ってこれは……!


「いてて、誰ですか?私のお尻を触っているのは?」

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