第24話 月と太陽

 午後11時。

僕はまた街から少し外れたあの店を目指す。

キャッチが列を作り声をかけてくるのを無視して、僕は進む。


「やっと来た。」


不機嫌なきらら。

きららは珍しく街の方へと歩いていく。


「おにいさんはさ、今の仕事どうやって見つけたの。」

「普通に就職サイトで調べて、エントリーシート出して面接して、そんな感じかな。」

「そうやって仕事見つけんだ。あたし知らなかった。」

「……。」

「それが普通ってやつなんだね。あたし、何も知らなかった。生きてて働かないといけなくて何も知らなかったから、ここで働くようになって。社会のこと全然分かってなかったなって思うんだ。」

「……。」

「おにいさん、あたしらもお兄さんみたいにちゃんと働けるかな。今のところが嫌じゃないけど、実際羨ましい。朝仕事に出て言って夕方には帰ってきて夜には寝れる生活。それも高望みになるのか?」

「高望みじゃないよ。誰だって望んでいい当たり前の権利さ。」

「今から目指しても間に合うのかな。」

「間に合うよ。いつからだって遅くないって。」

「言ったな?。」

「ああ、言ったよ。」


僕らはいつの間にか街の中心部に来ていた。


「あたし今から変わるんだ。」


きららは自分に言い聞かせるようにそうつぶやいた。

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