第12話 彩香の悩み④
少女たちと僕は外へ出る。
そして僕らは近所の川へと向かった。
川の付近はウォーキングコースとして地域の人が利用している。今日も例外でなく、若い人からお年寄りまで老若男女問わず様々な人が見受けられる。
「おー!みんな走ってるねー。」
「うちらも走ろーぜ!」
「オーなのです!」
そう言って三人仲良く走り始める。
青春だなあ。
三人が寒い中汗を流しながら走る姿を見てすごく眩しく羨ましく感じた。
しかしその数分後。
「ちょっと…。待って…。置いていかないで…。」
彩香がゼーゼー言いながら二人を追いかけている。
おいおい。彩香の運動に来てるのに、二人が突っ走って彩香を置いて行ってどうするんだよ。
「彩香ちゃん、ゆっくりでいいからさ。無理せず少しずつできること増やそうよ。」
「でも、彩香は太ってるから。二人に追いつくように運動して痩せないと。」
「無理はだめ。きっとそれだと体を壊すからさ。」
「そうなのかな…。それでいいのかな…?」
「うん、大丈夫だから。」
僕は彩香の頭を撫でてあげた。
「えへへ。でもちょっと今は汗臭いかもです。」
彩香は恥ずかしがりながら言った。
「そんなことない。すごく頑張ってる香りがする。」
僕は彩香にそう言った。
それからの日々。
彩香は時間を作っては走りに行っていたらしい。
らしい、というのは僕が仕事が忙しかったため、彩香と住んでいる里乃ときららの証言によるものだからだ。
本当にまじめな子だ。
僕はつくづくそう思った。なぜ風俗で働いているか分からないと思うほどに。
「彩香はすげーよ。あたしだったらあんな真面目に続けらんないよ。」
「彩香がいるから頑張れるのですよ。あんなに必死なんだって。ね、きらら。」
「それなー。」
三週間後、彩香は店で店長との面談があった。
結果はもちろんオッケーだ。
彩香は家に帰ってきて自信げに言った。
ただ、店長に「もうちょっと太ってる彩香ちゃんが好きだったな」と言われたのは納得いかないご様子で、「何だアイツ―!!」と怒っていた。
一件落着。
四人で、一緒になって彩香の幸福を喜んだ。
だが、その後次なる問題が起こるとはだれも思っていなかった。
四日後のこと。
「マジアイツムカつく!!!新人が調子乗りやがって!!」
きららの怒声が家中に響いた。
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