第10話 彩香の悩み②

「彩香!大丈夫?」


 泣いてる私を二人が介抱しながら連れて帰ってくれている。


「だって…!」

「大丈夫だって!痩せれるって!」

「彩香。私たちがいるのですよ。」


 私はずっと泣き続け、そのまま家に帰ってきた。


「おかえり。」


 おにいさんの声がする。

 おにいさん…!!

 私は泣きついた。





 びっくりした。

 いきなり彩香が抱きついてきたのだから。

 泣きじゃくる彩香を撫でていると、少しずつ落ち着いてきたのか、彩香は今日起こった出来事を話し始めてくれた。


 彩香はゆっくり一つ一つ話してくれた。

 怒られたこと、体型のこと、クビにするって言われたこと。


 悲しかった。すごく傷ついた。

 怖かった。クビにされてお金が手に入れられなくなってしまうことが。

 そして、太って働けなくなった私をきららと里乃は見捨てるだろう。軽蔑するだろう。

 と、彩香は言った。とてもおびえていた。


「するわけねーじゃん!」

「彩香はずっと仲間ですよ。たとえ、どんなに太っても働けなくなっても。」

「それな。彩香がいないうちと里乃じゃぜってー上手くやれないわ。」

「うん。きっとそう。それに何よりも。」

「「彩香はうちらの大切な仲間だから。」」


 きららと里乃は口をそろえて言った。

 彩香はそれを聞いて、何度も、ありがとう、ありがとうと言った。


 さて、次は彩香のダイエットである。


「どうしたらいいのかなぁ。おにいさんはどう思いますか?」

「うーん、例えば食事バランスが大事だってよく言われてるけど知ってる?」

「知らないです…。」

「今の体重とか分かる?」


 きららも加わってきた。


「わかんないよ…。」

「運動の秋と言いますし、運動もいいのですよ~。」

「それいーじゃん!うちらも一緒にできるしさ!」


 里乃もアイデアを出す。


 いろいろアイデアが集まってきた。


「こんなこと言ってあれだけどさ。」


 きららが言った。


「ぽっちゃりしてるのも彩香の魅力だと思うから、そーじゃなくなると少し寂しい気がするな。」


 なぜこのタイミングで言うのかと思ったが。

 彩香は大丈夫だった。


「少しだけだよ。痩せるのは。デブの彩香からぽっちゃりの彩香に戻るの。」

「ありがと。がんばろぜ彩香!見返してやろー!」

「一緒に頑張るのですよ!」


 二人のおかげで彩香も元気になり、僕らは眠りについた。



 あくる日。

 気持ちよく寝てたら、突然。

「おはよー!」


 きららが叫ぶ!

 うるさい!!

 朝早いのに迷惑な奴だ。


「「おはよー。」」


 二人も眠そうに返す。


 僕は朝起き、台所に向かう。

 僕は昨日の夜買っておいたもので朝御飯を作る。


 パン、目玉焼き、スープ、牛乳、りんご。


 これである程度バランスはいいはず。(おそらく)

 三人を食卓に呼ぶと、「「「おー!」」」と目を丸くして驚いていた。


「マジ?こんな豪華なもの食っていいの?」

「うそ!?すごいですおにいさん!」

「犬さんのお皿で食べてた子供の時とは違うのです!すごいのすごいのすごいのですー!」


 里乃ちゃんはいったいどんな過酷な環境で生きてきたのか。


「「へ?」」


 僕ときららと彩香は里乃の方を見る。


「なんでもないのです。なんでもないのですよ!」


 里乃は慌てて否定する。


「里乃ちゃん、つらい時は頼っていいんだよ。」

「うん。そのときは頼らせてもらうのです。」


 ご飯を食べながら食事をする。

 食事バランスについて、バランスガイドを見ながら話すと。


「そんなのがあるのですね!知れてよかったのです!」

「安いもんがいいんじゃねーのかよ!」

「勉強してみるっ!」

「おう。近くのコンビニで印刷して家に置いとくよ!」

「ありがとうございます!どうお礼を言ったらいいのか…。」

「お礼なんていらないよ。頑張ってな、彩香ちゃん。」

「うん!」


 可愛らしい笑顔で答えてくれた。


 次は、きららの案。

 体重計の購入である。


「うん、どんなのがあるのかなぁ」


 悩む彩香。


「近くの家電量販店に見に行ってみる?運動になるし。」

「行く!」


「行ってきな!うちらは待ってるから!」

「彩香~、ズルはだめなのですよ~。」

「しないもんっ!」


 そういうわけで、彩香と二人で家電量販店に向かった。

 ヤジマ電機。最寄りの大型店だ。


 歩きながら、二人で話す。

 彩香と二人で歩くのは初めてか。


「彩香ちゃん、元気になった?」

「はい!みなさんのおかげで。ダイエット頑張れそうです。」

「よかったよ。帰った時すごく泣いてたから心配だったんだ。」

「心配かけてしまいましたね…。痩せるのはすこしがいいですか?それとも。」

「個人的には少しがいいかな。その方が可愛いからさ。でも、体型で悪口言ったりするのは良くないんだよ。体型だってそれぞれの大事な個性だから。」

「えへへっ。嬉しい。おにいさんみたいなこと言ってくれる人いなかったから。」

「自信をもって、彩香ちゃん。」

「うん!」


 話してるうちにヤジマに着いた。

 彩香は僕に気を使って安い体重計を選んでくれた。

 可愛らしいピンクの体重計。


 彩香はすごく嬉しそうに体重計を抱えている。


「おにいさん、みててね!」


 彩香は僕に力強く言った。

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