第7話 悔しさ

 三人の家から追い出された僕は、家の方を見る。

 あっかんべー。

 きららは僕を睨んだ。


 僕が配慮が足りなかった、そのことには疑いの余地がない。

 どうしたらいいのかわからないけど、次会ったときは思いやりのある発言をしよう。

 考えていると、一つ気づいたことがあった。

 僕は貧困についてほとんど知らないんじゃないか。

 少し調べてみるとしよう。

 僕は近くの本屋へ向かった。


 一方そのころ。

 三人の家では、きららが怒りを溢れさせていた。


「あいつ、うちらが貧困ってこと分かってないのかなあ!よりによって彩香にずけずけと言うし!ありえないんだけど!」

「でも、おにいさんに悪気はないと思うの。だからきららちゃん。」

「でも、悔しいんだよ!馬鹿にされてんだよ!」

「でも、あのおにいさんなら助けてくれるかもって思ったのですよ。すこし。」

「あたしも思ったよ。でも、あんなこと言われたらさ悔しいの!裏切られたの!信頼したのに!」

「「そうだね。」」


 彩香と里乃はきららの言葉に頷きながらも、


「私はもう一回来てほしいな。」

「これまでの人と違って、悪意は感じなかったのです。」


「あんたたち!私たちはそうやって騙されてきたんだよ!あのときも!この前だって!」


 だんだん涙声になっていくきらら。

 二人も痛いほどそのことを知ってるので何も言えない。


「ほら!そうでしょ!」


 きららは泣きながら言った。


「でも…。人を信じられなくなるのは嫌なのです…。」

「この前は危険な行為をされそうになってたのに、なんで……。」

「分からない…。けど一人で殻の中に閉じこもってしまったら、助けが来ても救われなくなります…。」

「だけど!」

「おにいさんにはそうした行為をする時間もあった。だけどしなかった。」

「それは安心させるためよ!」

「そうかもしれない。でも、そうでないかもしれないのです。」


 だから、もう一度だけ信じさせて。

 里乃は小さく、されど力強くいった。


 そこまで言うなら。

 きららはもう一度信じると答えた。


 だから、もう一度おにいさんに会いましょう。

 彩香も決意を込めて言った。


「でも、どこに行けばいいのさ。」


 きららはつぶやく。


 あ……。


 二人は黙った。

 盲点だった。

 連絡先を三人とも知らなかったからだ。


「どうすんのさ。」


「連絡先は分からないけど、来そうな場所はあります。」


「?」


 きららは首を傾げる。

 里乃はなるほどと呟く。


「着いてきて二人とも。」


 彩香はそう言って歩き出した。


 あの日出会った、あの場所へ。






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