第6話 colorfulとの別れ

それからもう三年。


 アイドルグループとしては、誰一人辞めず、休業もせずにこの長い活動期間、俺はずっと彼女たちの活動を追っていた。


 だからこそだろうか、長田が

「嘘だろ」

とうなだれている横で、

「解散……?」

と志田が涙をこらえている横で、

俺は好きだったグループの解散というオタクにとっては、北の国のミサイルよりもはるかに重要で重い事実を何の抵抗もなく、受け入れることが出来たのかもしれない。


 いや、俺は受け入れたというよりも、事実に対して、一切の反論や拒絶と言ったものがなかったのだ。

 


 運営の人の話はまだ続いた。


 「解散と同時に、この事務所で新しくアイドルグループを作ることになりました。グループ名やメンバーなどは未定ですが、プロデューサーは、秋田満さんです。」


誰でも知っているような超有名プロデューサーの名前に会場全体がほんの少しだけ熱を取り戻す。


 「なお、解散と新グループ結成に伴い、新しいグループに移籍するかどうかをメンバー全員に聞いてみた結果、古川美波と北山リナの二名が、新しいグループに合流することになりました。ぜひ今後とも、応援よろしくお願いします。本日は、お忙しい中本当にありがとうございました。」


 やはり、事前に聞いていたのだろう。


 誰も涙をこぼすことなく、彼女たちと運営のおじさんは、ステージ上からいなくなった。

 


 俺たちは、帰路に就いた。


 ライブ会場に着いたころにはやんでいた雨は、また降りだしていた。


 灰色の空の下、ビニールにパチパチという音を鳴らしながら、どこに寄り道することもなく、真っ直ぐに、ゆっくりと改札に向かった。


 会場の前の鉢から、アリウムが僕らを見送った。




(これを書くのは二回目ですが、この小説に出てくる花の名前(今回はアリウム)には、一応全部意味があります。気になる人は、調べてみてください)

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