1-2

 呉起の家は裕福だった。彼は政界に出て宰相(大臣)になるのが夢で、家財を投じて諸候に献金し、各地を回った。しかしその苦労は報われず、呉起の家は没落、財産を失っただけになった。

 周りの者が、呉起の行いを笑った。

 呉起は、笑った者の名を竹簡に控えておいた。その数三十余人。更に住所を特定できたところで、呉起は街に出て剣を五本買い求めた。

 この猟奇な殺人は、そんな経緯で起こった事だった。


 人目を避けて、呉起は家に帰った。

 彼の血塗れな姿を見て、母が驚いて聞いた。

せがれや。何があったのです」

「何でもありません。母上、お願いがあります。我が家に残っている金を、私にください」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る