7-3

 日の落ちるのを見ながら、呉起は逃げ続けた。血の跡が道に残り、そのせいで何度も見つかり、傷も受けている。

「よし。あの場所へ行くぞ」

 呉起はぼろぼろになった鎧を脱ぎ捨て、意を決して走り出した。宮殿の塀を越え、中に入る。

「来たぞ、呉起だ!」

 しかしすぐに、待ち受けていた兵に見つかってしまった。呉起は建物の間をすり抜けて走り、茂みや木立を利用して身を隠した。辺りはようやく暗くなり、血の跡もほとんど目立たない。

「……ここだ。この臭い、間違いない」

 明かりは無いが、鼻を突く臭いで呉起は目的の建物を見つけた。

穀潰ごくつぶしの公族ども、お前たちが恐れた呉起は、ここにいるぞ!」

 呉起は大声で叫び、手にかいた汗を拭って、建物の扉を開けた。途端に、腐ったような臭いが溢れて来た。

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