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 兵士と平等に労苦を分かち合い、彼らの心に近付く。結果、兵士たちは呉起の情義に感動し、彼のために死ぬ気で戦うようになった。呉起の怖いところは、これが優しさではなく全て計算で行われている点である。しかもその算盤そろばんは全て、自身の出世という決算のために弾かれている。

 仁愛じんあいを利用した扇動工作せんどうこうさくというべきであろうか、かつて儒学を破門になった呉起が、その要点はしっかり吸収し、俺ならこう使うとあざ笑っているかのようである。

「兵士の最大の武器は、生命の力、死の力だ。それを引き出すためには、兵士を軽んじず、その心をつかむ事だ」

 呉起の兵法書「呉子」を読むと、彼がそう語りかけて来るように覚える。

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