6 呉起、宰相となる

6-1

 次の職場を求めて、呉起ごきは今度は楚国そこくへ行った。


 これまでいろんな国で騒ぎを起こした呉起だが、やはり自分の評判が知れ渡っている国は避けたかったのかもしれない。

 楚は中国南方の広大な地域を支配する強国で、今まで彼が接点を持たなかった国である。


 楚の君主は悼王とうおうという人物で、呉起の才能を高く評価した。


「戦乱の世なのだから、仕える国が変わるのも珍しくはない事だ。での無敗ぶりは聞いている。是非とも我が国で、宰相として働いてもらいたい」


 ついに、呉起は宰相の座についた。


 かつて自分でつけた腕のみ傷を見て、呉起は涙を流した。

「……母上、やりました。宰相です。これまでの努力と苦労が、ようやく報われました」


 文字どおり幾多のしかばねを越えて、呉起の悲願は達成された。しかし、ただ宰相に就任すれば終わりではない。呉起は持ち前の切れ味を生かし、楚の国政に新風を吹き込んだ。

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