6-2

「財政を再建せねばなりません。そして国の方向性を定める事です」


 将軍の身分ではできなかった事を始めようとしていた。

 悼王が興味深そうに先をうながすと、呉起は続けた。

「調べてみると、この国にはずいぶんと無駄な官職があります。それを必要なものだけに絞る。更に、公族でも遠縁の者は特権待遇を廃止します」

「なるほど、大胆な政策だ」

「お言葉ですが、中原(中央)ではすでに行われている事です。この楚は大国ではありますが、政事は今ひとつ先進から遅れております」

「分かった、任せよう。好きにやってみろ」


 悼王は気前良く笑った。呉起は嬉しかった。

 ようやく自分を理解してくれる君主に巡り会えたのだ。


 呉起は新参であるため、楚の官僚たちには何の義理もない。

 遠慮なしに官職の剥奪を行い、浮いた費用で軍備を増強した。


 これによって楚軍は精強になり、悼王も気を良くした。

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