4 呉子の兵法

4-1

 うとんぜられたのを知り、呉起ごきを出て魏国ぎこくへと移った。魏は戦国七雄せんごくしちゆうの一つである。

 魏の君主は呉起の才能を認め、将軍として採用し、隣に接する大国・しんを攻めた。呉起は秦の城邑じょうゆう五つを攻め落とすという大きな功績を上げ、周囲の度肝を抜いた。魏君主は呉起を信任し、西河せいがという要衝地ようしょうち太守たいしゅ(長官)に任じた。

 呉起の用兵ようへいは、己の理論に基づいた心理作戦を得意としていた。ただし作戦は敵にではなく、味方の兵士に用いる。

 激しい性格の呉起だが、軍にあっては別人のようだった。馬上で叱咤しったする事などない。彼は型破りな将軍だった。着る物や食べる物は身分の低い兵士と同じにし、寝る場所もそこらにごろ寝、移動には馬車など使わず、己の足で歩く。もちろん荷物も自分で持つという、徹底的な現場主義を貫いた。

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