7 必殺の矢

7-1

 呉起ごきは戸の隙間から様子をうかがった。


「全て奴らの私兵しへいか。さすがに、俺の息のかかった者は使わぬよな」


 呉起には、本気で自分を殺しに来ているのが分かった。

 呉起は家の者に外に出るなと言いつけ、自分は軽い皮の鎧を着込み、兜をかぶる。


 その時、外から呼びかける声が聞こえた。

「宰相呉起! 公族をないがしろにした罪を償ってもらうぞ。神妙にばくに就け!」


 呉起は聞きながら鼻で笑った。

「何が縛だ。弓手ばかりじゃないか」


 捕らえる気など無く、その場で射殺すつもりなのがありありと分かった。


 呉起は裏口の戸を開けた。

「最後の最後まで、俺は一人だったか。俺が異端なのは分かっていた。どうせ、誰にも俺の真似はできんだろうさ。今からする事もな」


 呉起はそう言って、屋敷の外へ飛び出した。


 だが敵の数は多く、すぐに発見されてしまった。


「呉起が逃げたぞ! 追え!」

「市街でも構わぬ、射てしまえ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る