5-2

 当時の宰相の公叔座こうしゅくざという人は、呉起がその椅子を狙っているのを知っていた。

「何とか呉起を追い払う手はないか。あんな残忍な男に狙われているかと思うと、夜も眠れぬ」

 憂鬱になっている公叔座に、一人の下僕が進言した。

「恐れながら、私めに一計がございます」

「呉起は名将だ。簡単な罠にはかからんぞ」

「簡単な罠ですが、奇策です」

 下僕は、公叔座の耳元で筋書きを語った。公叔座の陰鬱な表情が、むず痒そうな笑いに変わる。

「面白い。やってみる価値はありそうだ」

 公叔座は妻を呼び、早速準備にかかった。

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