5-4

 公叔座の家に着くと、彼の妻が派手な着物で出迎えている。


「ようこそ、呉起将軍。ご活躍は伺っております」

 公叔座が馬車を降り、妻に声をかけた。


「食事の用意はできているか?」

 すると妻はきつい目で夫をにらみ、

「できているから、お迎えに出ているのです。あなた、私がのろまだとでもおっしゃるの?」

「い、いや、ただ聞いただけだ」

「お客様の前では、途端に偉そうになって。あなたが宰相になれたのは、私が君主の娘だからなのをお忘れにならないでね」


 妻はぷいと後ろを向いて、家に入ってしまった。

 公叔座は愛想笑いをして、呉起を招き入れる。


「奥方様は、公主であらせられたのですか」

 呉起が聞くと、公叔座が声を潜めて言った。

「お恥ずかしい話だが、わしもあれには頭が上がらぬ。魏の公主は、気が荒い女ばかりだ」


 その後食事が始まっても、公叔座の妻は何度も話に割り込んで場の空気を乱し、公叔座が少しでも批判がましい事を口にすると「私を邪魔だというの、偉そうに」と切り返す。


 公叔座の家人も、妻の機嫌を伺ってばかりで公叔座には冷たい。


 公叔座はだんだんと落ち込んでしまい、最後には「気分が優れなくなったので悪いが帰ってくれ」と、呉起を送り出した。

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