十一踏 パートナー
「目がぁ!! 目がああぁぁぁぁっ!!」
舞台をところ狭しと転がるタイヤー。呆れたエルは、いい加減にしろと転がるタイヤーを止めるべく、足で顔を
「あふん!」
その瞬間、タイヤーの体が青い光に包まれるとその光はタイヤーの髪と手で押さえている目の辺りに集まる。
光は徐々に失われ、タイヤーの髪は光と同じく青色へと変貌していた。
「ぐっ……ぴ、ピンク……」
タイヤーは目の痛みを感じていたが、踏まれるその瞬間だけは薄目を開き迫りくる靴の裏とそこに続く雪のように白い太もも、そしてその先の布の色までハッキリと確認していたのだ。
「死ね! へんたい!」
最初何を言っているのか理解が及ばなかったエルも、流石に自分の下着の色は覚えている。
更に追加でタイヤーの顔面を二度、三度踏み続けた。
他の生徒達のうち女子生徒は、踏まれて半笑いのタイヤーに顔がひきつり、男子生徒はどこか羨ましそうな表情をしていた。
三十分ほど経過するとタイヤーの髪の色と瞳の色は元へと戻る。リックがタイヤーのスキルを知りたがり、渋々タイヤーは《麦》の説明を行った。
「《踏まれる程に強くなる》……か。でも、エルが何度か踏みつけてたけど、タイヤーにはあれ以上変化なかったよな。そもそも、何が強くなったんだ?」
「俺にもわからないな。わかったのはエルの下着の色くら──へぶっ!」
余計な一言を口走りタイヤーは、エルに舞台の床へと倒され叩きつけられる。
「ありがたいと思いなさい」
エルが再びタイヤーの顔を踏もうとするが、タイヤーはそのまま床を転がり回避する。
「なんで、避けるのよ!!」
「いや、エル、お前今、
エルが踏もうと空振りした床は軽く焦げ臭くなっており、タイヤーは冷や汗が止まらなくなっていた。
「エルちゃん。次、わたしにやらせて?」
「フローラ? いいけど、下着見られるわよ?」
「まぁ、さっきタイヤーくん、散々見ていたから今さら、ね。それにタイヤーくんのフィーチャースキルって、わたし達のチームだとわたしかエルちゃんの両方で試しておかないといけないじゃない? 万一、エルちゃんが踏めない時もあるでしょ」
「まぁ、そうね。と言う訳だから、そこに寝なさい。タイヤー」
エルとフローラの二人で淡々と話が進められていく。一応フローラの言い分も最もでタイヤーは渋々床へうつ伏せで寝そべる。
「それじゃ、いくわね。タイヤーくん。えいっ!」
タイヤーの背中の辺りを踏んでみたフローラであったが、さっきみたいにタイヤーの体を包む光が現れない。
二度、三度踏むが反応はない。
流石に原因がわからずエルもフローラもタイヤーも困惑する。そんな中、リックが「さっきと同じように踏んでみては」と提案してきた。
なるほどと、タイヤーはやや仰向けにフローラはタイヤーの顔を目掛けて踏む。
すると、リックの提案通り青色の光にタイヤーは包まれ髪と瞳の色が青色へと変化した。
「おお。リック、流石だな……って言っていいものか」
リック曰く、自分の父親を参考にしたという。リックの父親──つまりはこの国の王子様。
これ以上詳細を聞いたら不味いと感じた三人は、それ以上追及しなかった。
しかし、これで何が強化されるのか分かるとタイヤーの返事を待つが、ウンともスンとも言わない。
「ちょっと、タイヤー。何か変化無いの?」と痺れを切らしたエルが詰め寄る。
「うーん。分からない。何が変化したのやら」
段々と面倒臭くなってきたエルは、フローラへ何かを耳打ちする。
一体何を話しているのか気になったタイヤーは、徐々に二人へ近づくと、いきなりフローラが殴りかかってきた。
「ちょっと、フローラ、待っ──へぶっ!!」
容易に吹き飛び再び床を転がっていくタイヤー。『強くなる』とある以上、エルは何か攻撃すれば分かるかもとフローラをけしかけたのだった。
しばらく
「わかったよ、皆。どうやら強化されているのは“動体視力”だ」
「“動体視力”? あなた元々いいはずでしょ?」
「いやいや。さっきフローラが繰り出した拳がハッキリと迫って来るのが分かったんだよ。ただ……避けれる、反射神経は無かったからモロに受けたけど」
物は試しにとリックの銃を撃つと、ハッキリと光の弾を捉えられたとタイヤーは言う。銃弾のスピードを捉えられるとは信じ難く実際にはタイヤーにしか分からないことだが、エル達は信じてくれたのであった。
そして、スキルの実験を終えた四人は、天井と壁に穴を開けたリックのせいで管理の先生に、こっぴどく怒られてしまった。
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