第14話 ぼく、歓喜する。

広場らしき場所につくとわんこから降りる。けど一歩踏み出せずまごついているとライラママに優しく背を押される。

「大丈夫よ~みんな噛み付いたりしないわよぅ」

「あ…あいあいあー!」こんにちはー!

とにかく最初が肝心と大きな声で挨拶をする。みんなが気づいてぼくに視線が集中するとどきどきが最高潮になる。だいじょうぶ、かな…?

「まあ、この子が最近生まれた子ね!」

「こんにちはー」

「よろしくね」

笑顔で穏やかに答えてくれる人ばかりでほっとして力が抜けてしまった。

「あぅ~」

「がうっ」

「あらあらあら」

支えてくれるわんこにもたれ掛かりなんとか座り込まずにすんだ。


「おやまあどんだけ緊張してたんだい?」

「ふにゅ?」

前世基準で他のニンフュより一回りほど上の年齢に見える一人が話しかけてきて顔をあげる。

「マーマ」

「ま?」

ライラママの言葉に首をかしげた。マーマってママのことかな?お母さん?誰が?誰の?

「ああ、お前さんにとってはバーバかね」

「…ば?」

「そうさ、ライラの母親やってるのさね」

え?

まじまじと隣に立ったライラママとバーバ(?)を見比べる。ニンフュに血縁、というのはない。つまりこの人もライラママが世界から生まれたあと、母親という役割を担ったのか。だからぼくから見ればバーバ、お祖母さんになる…。え、この年齢不詳の美魔女が?20代ほどにしか見えないんですが。ライラママは辛うじて17に見えるくらいなんですけどー。後で聞いたことによるとニンフュはある程度成長するとその後はかなり緩やかになってどこかで容姿の変化は止まるんだって。そして期待に輝くお顔が明らかにぼくが呼ぶのを待っている。

「………ば」

「ば?」

「ばあば?」

「おお、そうさ、バーバだよ~」

「あぅ、あいあー」よろしくお願いしまーす。

「うんうん、よろしくねぇ」

ゆるゆるに緩みきった顔でぼくの頭を撫でてくれた。前世で小さい頃に死んだばっちゃを思い出してちょっと泣けた。


おねーさんたちはみんな優しくてぼくにニンフュの特性など教えてくれた。木のあるところや水のそばが好きだとか、みんな相棒の動物と相思相愛だとか。なんとこの世界のニンフュはもれなくもふもふを愛しもふもふに愛されしもの、らしい。もふもふだけでなくすべすべつるつるもイケる天然のテイマーみたいなものだ。ぼく、大歓喜!

そしてぼくだけ違うのは。


「あーたまにあるのよね」

「そうそう、五百年に一人くらい?」

「ええ、千年じゃなかった?」

「うっそー三千年でしょう!」

「まあ、珍しいと言えば珍しいけど、形だけだから」

口々に教えてくれるおねーさんたちに頷く。

「…あー…ぅ?」あー…って、形だけ…?

「そうさね、そのぶら下がってんのついてるだけだよ」

「えぅっ」まじで!?

「うちら見た目こんなだし、あんたもこんな感じになるわよ!」

「え…」

「ニンフュは無性なのよぅ~」

「だから肉体接触しなくても想い合って願えば子供も産まれるしどっちともつがえるのよ」

「ふぁ…あーうー!」や…やったーー!

良かった!前世みたいな嫌な視線にあうのやだったんだけど、無性なら大丈夫だよね!ぼく、大歓喜!!

「うひょ~」


「おやまあ」

「あんなに喜んで…かわいいダンスね」

「でも良いの?多分あのこ胸は育たないわよ?一応オスだから」

「平気よ~見た目はこう~美少女になるはずだものぉ」

「可愛いから良いじゃない」

「…そうね」

浮かれて再び風にのって踊るぼくを微笑ましく見守るみんながそんな風に話し合っていたとは、将来その道の危ない人に狙われそうな美幼女に育ってから知るのだった。

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