第6話 ぼく、魔力切れする。

「あ、ぅうあー」

試行錯誤の末、なんとか適量の水を出せるようになりさらに温風を出せるようになりました!それもこれも我慢強いわんこのお陰ですハイ。

さっぱりしたわんこの毛並みはさらっさらキューティクルつるんですよ本当にありがとうございました。むふっと笑みが零れる。

あ、ぼくもついでに洗っちゃおう。生まれて三ヶ月お風呂に入った覚えが無いもんね。あそーれ。


「あー、あぶっあぶぶぶぶ」溺れかけました。冷たかった…死ぬかと…二回目だけど…生まれたてなのに死ぬかと思っ、わんこも冷たかったんじゃ…なのに文句も言わずに…ほんますまんかった。

温水も出るように練習した後、服ごと自分を丸洗いしました。お風呂の気持ちよさはないな。もっと簡単に洗えるようにするか、しっかりお風呂用意した方がいいかな。でもとりあえずまだから大丈夫、だよね?

きれいにしたところでもう眠くなってきたので、おやすみなさーい。赤ちゃんの仕事はよく食べて寝ることだもの。寝る寸前わんこがすごい形相で吠えてたような………?


目が覚めたら世の中が暗かった。うん、今までずっと視界はぼんやり、しょっちゅうおねむで明暗の感覚はあったけどあんまり意識してなかったよ。暗い時間には多分寝てたね。でも魔法を使って疲れて早めに寝たせいか今日は変な時間に起きたようだ。もふもふベッドから起きると闇に光る二つの目。ぴゃーとかぴょーっていう変な悲鳴が出た!けど赤ちゃんボディじゃ逃げられない。あわあわしてる間に光る目が近づいてきて、濡れた感触が頬に触れて気を失うかと思った。べろんって。…ん、べろん?

「う、」もふもふ。

「……あー」


わんこだったよ。そうだよ暗闇でよくものが見えるように光を取り込む機能が人間より発達してるから光ってるように見えるんだっけ。緊張が抜けたぼくはわんこに凭れる。んん、いいもふもふ。ふう、っとため息を吐いてあれ?と首を傾げる。傾げたら頭が重くてぽふ、と寝転ぶ。魔法使ったら疲れて眠くなったけど、お腹減ってないかな。前は疲れる前にお腹減ってた気がするんだけど。

うーん?お腹をさすって考えても異常はなさそうだし、とのほほんとしていると横からぐっと押されて振り向く。ちょっと青みがかった黒目がじっとぼくを見つめてた。もう一度押されてしっとりしてる鼻で押されたんだと分かる。それから何度か押されて叱られているのかと思った。なんで?と思うとぶっとい前足でお腹をつつかれる。お腹減ってないと思うけど減ってる?違う?うーん。疲れて眠くなる前にお腹が………減ってた?夢中になっちゃって気が付かなかったってこと?ふんすと鼻息で答えられてまた鼻で押される。


そっか。ラノベあるある的にもしや魔力切れとかでんだ。ごめんなさい。

これからはちゃんと気を付けてご飯くうき食べる。疲れて倒れる前に。赤ちゃん語だけどそう言ってゆっくり頭を下げた。

「がう」

はじめて声を聞いたよ。いや寝る前…倒れる寸前吠えてたっけ?あれは魔力切れの警告だったんだろう。それからほっぺたをべろんとされる。許してくれたみたい。わんこは改めてぼくを包むように丸くなって尻尾でぱっさぱっさとお腹を優しくたたいてあやし始める。柔らかなタッチとゆったりしたリズムにぼくは今度こそ眠りについた。


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