第17話 ぼく、はじつか!
アリア姐さんとシェリーとケーシィとぼくで広場に戻るとばあばが待ち構えていた。
「ばあば?」
「おかえり。待ってたよ」
「う?」
集落中央の広場にはライラママも含めてみんなが揃っているような?こてりと首を傾げるとライラママとばあば以外のみんなが悶える。
「実はねいつもの薪がちょっと足りなくなってねぇ、ぼくに薪拾いに行ってきてほしいのさ」
「…」
ニンフュでも冬は寒いらしくちょっとばかり火を焚くことがある。ほんのちょっとだけど。しかも落ちてる枯れた木の枝を拾うだけの簡単なお仕事をこれだけ大人のニンフュがいてあえてぼくに言うって事は…?
「はじちゅか…」
「なぁに、ぼくならきっとできるさね!」
「あ、あ~ぅ」
周りを見てみればみんなそわそわとどこか落ち着かない感じ。心配そうな雰囲気よりこれからに期待をはせているような。
「ここに必要なものを入れたから〜持っていってらっしゃ~い」
ライラママが持っていた小さなポシェットを僕の首から肩へ斜めがけにする。かわいい猫の顔型でキラキラの石で瞳、口元やひげはきれいな糸で刺繍がされ、底には小さな鈴と背面にはもふもふの尻尾がついてる。中を覗いてみると、そこには宇宙がありました。え?いや、宇宙なの。真っ暗だけどよく目を凝らすとチラチラと光るものがあるの。宇宙なの…。でも手を入れたら頭の中にリストが出るよ…うん…アイテムボックスだね…。ぼくまだ0歳児なんですけどいいんですかね?生まれて半年経ったかしらん?勿論貰うけれども。
後で聞くとライラママとばあばが大張り切りした結果らしい。本来持ち主に合わせて成長するのを作るが、久しぶりで箍が緩んだとか。一生物ですぞ?
「西の林の奥に良い薪になりそうな枝が落ちてるはずよ~」
というわけでとんでもないアイテムを手に入れましたが、森で初めてのお使いです!
一人で歩いてお店(森)でお買い物(薪拾い)するのが定番だと思うのだけど…相棒はついててオッケーらしい。ここいら辺はニンフュのテリトリーだから攻撃仕掛けてくるような敵対生物はいないって聞いてるけど物理的危険…主に転ぶとかですね…が無いとは限らないし、いざ(迷子)となったら相棒に連れて帰ってもらうという命綱(迷子札)?だそうです。うん、ぼくまだ一歳未満なのよ…。
いつもは泉の東側から広場のあたりで遊ぶことが多いから、西側の集落外れは行ったことがない。みんなも普段近づく場所ではないはずなんだけどね。ただ薪拾うだけなのに緊張するなぁ〜。
「がぅ」
「ん、いこー!」
でももふもふの相棒がいるなら怖くはない!ぼくはわんこの尻尾を手を繋ぐ代わりに掴んで隣を歩き出す。ちゃんと身が入ってない部分ですよー。むふふ相変わらずいい手触りだぜ。
「ふん、ふんふふ、ふんふんふーん」
しかし鼻歌歌いながら森の中へ入るとなかなか薄暗い。心なし曲調まで不穏な響きになってしまった。怖さ盛り上げてどうするんだぼく。
初めて入る西の森は東の森より木の生え方が密で木漏れ日が少なく昼間なのにかなり暗かった。少し考えてぼくは手のひらに握れるくらいの光の玉を出現させる。広げた手の上にふわふわ漂う灯りは白く発光している。それを前方へ掲げながら歩こうとして、光がすいと手を離れびっくりした。だが遠くへ行くのでなくぼくの少し前を漂い、行かないのかと時折ぼくの頭の上を旋回する。どうしてか自我でも持っているかの如き様子である。
「えっと…あんにゃい、してくりぇるの?」
そっと聞いてみたら、ぶんぶん上下に動く。頷いてるみたいだ。
「じゃあ、お願いしましゅ!」
光は一度上下に動き前へ進み始める。楽しげに左右に揺れながら。うん、怖くないね!
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