第12話 ぼく、観察する。
治癒()も覚えてぼくは部屋から十歩を余裕で歩けるようになりました!十一歩目は転びそうになるため、しゃがんで休憩というか観察をすることに。
まずしゃがんだ場所は白い花は少なくラベンダーピンクのキラキラした花が多いとこ、形は鈴蘭に似てる。丸い花をつつくとしゃらんとウィンドチャイムみたいな涼しげな音がした。風が吹いたら隣同士ぶつかってやっぱりしゃららんと音が鳴る。さわった感触は花びらの柔らかい感じなのに音は金属っぽい高音だ。
「くふ、うーあーだーぁう」
面白くなって歌うと風も踊って花も踊る。ぼくも一緒に立ち上がると風に乗ってくるくると回りきゃきゃと笑う。楽しい。花びらも風もぼくもくるりくるり、舞って、歌う。
しゃらら、しゃららん。
「うきゃー、あーあー」
フィギュアスケートみたいに高速スピンをしてポーズを決める。
「まぁ~上手ね~ニンフュらしいわぁ」
ライラママに拍手をいただきわんこにはしっぽ車輪いただきました。あざっす。というかこの感覚は種族らしいのか?風が気持ち良くて清々しくて気分が高揚する感じ…。
風魔法で浮いていた足を地につけるとすぐそこに泉があった。湖面は澄んで碧く、深さはそれほど無さそうだがぼくが入ったら頭まで浸かってしまうだろう。近くまで寄って覗き込む。絶対落ちないようにそろっと動くが心配になったらしいわんこがかけてきて、産まれてこのかた着っぱなしの服の裾を咥える。いやいやパンチラならぬ丸見えですよ?
「あうやっ」
振り向いて抗議するとわんこの目が他にどう支えろと、と言ってる。いやどうしよう?でも水の中は見たいのだ。さっきみたいに浮かんで見ることもできるけども、ぼくはふちから覗きたいの!
「むー…あぁう」
そうだ、立っているから転けるんだ。こう…腹這いで寝そべって見れば大丈夫!というわけでよっこらしょ、と膝をついて直接土の上雑草のお布団に寝転がりふちから池の水を覗き込む。隣で器用にため息をつくわんこは気にしな~い。
「あらあらあら」
ライラママは後ろでクスクス笑っている。基本的に見守るスタンスらしいから自由でありがたい。本当に危険なときはしっかり助けてくれるだろうし。ちょっとの間ではあるけれど同じニンフュだからかすでにそれが当然みたいな信頼感があった。
水の中は透き通っており底までがはっきり見えている。苔がついた丸みのある石が転がっていて水草もその間から生えている。水が湧き出す動きにつれて水草がゆらゆらする動きにメトロノームを思いだし、眺めるぼくの頭も揺れる。
「うーあー…んにゅぅ」
風や木々のざわめき、鳥のさえずり以外に余分な音の無い心地良い空気に、優しい花の香り。ゆったり揺れて、だんだん、眠くなって、き…t…
「ぬー…くふん」
「うふふ、良い夢をみてるのかしらぁ」
「がぅ…」
眠りに落ちたぼくをゆっくり抱えるとゆらゆら揺すりながら、部屋へと戻る。
『そう、ゆっくりでいいの。ここにはあなたを追い詰めるものなんて、何もない…。ニンフュのゆりかごで癒しを…』
優しい腕の中でぼくはたくさんの動物と草原を走り回る幸せな夢を見て…
添い寝してたわんこに蹴りを入れ起きた後にジト目で抗議されるというご褒美、げふんげふんお説教をいただきまたもや華麗に土下座を決めたのはまた後のお話、である。
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