第24話 ぼく、日常を満喫する。

うららかな陽射しに柔らかな風。午睡を楽しむにはぴったりの日和である。

「ふんふんふ~ん」

鼻唄をこぼれさせつつ集落の中を歩けばうとうとしてるニンフュたちが手を振ってくれるのでぼくも手を振り返し挨拶する。常にそばにいる相棒同士も尻尾を振って挨拶を返している。和やかなニンフュ集落の日常だ。

出来上がったブレスレットはもうライラママとばあばに渡したので、今日はお散歩をしようと決めたんだ。朝起きて遊びがてらひととおりわんこと魔法の練習してからやること決めるんだけど、前世のようにカレンダーも時計もない。初めて森に入ったときのような集落の行事なんかはあるけど、それも何となくのタイミングらしいし。天気と気分で決める感じで良いのだ。やることというのもやりたいことで、やらなきゃならないってんじゃない。今のところやらなきゃ困るって言うのもないからね。空気さえあればニンフュとして生きていけるから。だから、今日やりたいことを今日決める。気が向かなけりゃ部屋でまったりもありだ。このユルい日常が僕はとても気に入っている。

んで、今はたぶん前世で言うところの春頃。集落の広場や道端の花も今を盛りと咲き誇っている。ここで嬉しいのが花粉症がない体に生まれたってこと。前世ではどれだけ花粉を呪ったことか…!お散歩もはかどるというものだよ!


そんなわけでせっかくだから花満開の場所を目指してるんるんとスキップしながらわんことともに歩いてるんだけど。広場に来たらど真ん中の切り株にドアが生えてますよ?

「おはようさん、ぼく」

「おはよー。こえなに?」

「転移門やで~」

その場にいたシェリーに聞けばとんでも単語に目を丸くする。転移門、っていったら次元空間を移動する、すごいものだと思うんだけど。目の前に鎮座するそれはどう見ても青い猫型ロボットのあのドアに見えるんですが。

「今日は晴れてて良い陽気だから、お花畑に繋げてみたのよぅ~」

ライラママの言うことにゃ転移門というのはまあくぐれば好きな場所に行けるだけのなんなら単なる時空の歪みなので見た目はどうでも良いので、人によって違うらしい。え、ぼく、民家のドアを想像してるってこと?夢がなくて悲しい、と思ったらみんなが慌てて好きなものをイメージすればそれに変わると教えてくれた。


よし、ならかっこいい門が良い!なんかこう見上げるほど大きい凱旋門みたいな荘厳なやつで!

「…オゥ」

目を閉じ腕組みうんうん唸ってイメージ固めたらミニサイズな凱旋門になりましたよ。どうやらサイズはこのサイズに固定されとるようで。まーいっか。白亜のどっしりした柱と上部に絡まる雲と天使の彫刻がお気に入りポイントですよ。土台はもとからあるでっかい切り株なのでそこによじ登るとすぐそこに波紋が広がる水面みたいなものが。手を突っ込んでみるとこう蜘蛛の巣に引っ掛かったようななんとも言えない感触。

「うぇ」

顔をしわくちゃにしてしかめたぼくにみんなが苦笑した。

「こればっかりはな~」

「いろいろやってみてんけど、この違和感は消えないんよねぇ」

「みぃんなが通る道よねー」

「まあまあ、一瞬だぜ。我慢して飛び込みゃいいのさ!ほいっ」

アリア姐さんが一番にくぐる。続いてケーシィもシェリーも入っていった。相棒たちもふもふもどんどん歪みを越えて消えていく。見た目は完全に水に沈む感じだ。

「あたしゃここで待ってるからね。ほらライラと一緒に行っておいで」


バーバに促されてライラママと手を繋ぐと凱旋門(仮)に思いきって飛び込んだ。つもりだけど実際はライラママに手を引かれ辛うじてジャンプ(十センチくらい)しただけだった。

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