第23話 ぼく、あみあみ。
葉っぱをわざと出した状態で丸四ツ畳み編みにしてみることにした。ばあばに見守られながらライラママに手伝ってもらって作る。だってねえ、赤ちゃんの指先って小さくて丸くて思ったように動かないんですよ!!
「うぐぐ…むっきー!」
「あらあら~ほらこうやって引き締めるのね~」
「ううー、あいあちょ!」
時々引き締めをやってもらいつつも全部自分で編んだどー!はふう。
「できちゃ!」
「いいじゃな〜い」
ちょっと太めで歪みはあるけどちらほら飛び出た緑の葉っぱがいい感じの飾りに見えるし、自分で着けられるように作った輪っかに別の花から取った黄色い実をはめる留め具もアクセントになって可愛くできた。ライラママにも褒められてぼくウッキウキである。
「なかなかうまいもんだね」
「ばあば、あげゆ?」
「いいのかい?ありがとうね」
感心した顔をされて嬉しくなったぼくはまだまだ使えそうな蔦が残っているのもあり、ばあばとライラママにも作ることにした。
おんもで外遊びも楽しいけれど、ゆったりあみあみもまた楽しいのだ。
ここに生まれて一年と半くらいだけれど今日はあまり見たことのない雨の日だ。と言っても激しくはなくしとしとと優しく植物を濡らす程度。
お家の中から窓の外を眺めつつ蔦を編む。
「ふふふふふんふん、ふふふんふん」
雨の歌を脳内再生しながらゆっくり指を動かす。焦って編むと失敗するので慎重に。動かす方向、持つ本数、引く強さ。確認するように一度手を止めて見てから次に行く。これはプレゼントにするのだからなおゆっくりになる。早く渡したくて気持ちは急くけれど雨の音が宥めるように響くのに耳を傾けて、心静かに手を進める。
「ふーふんふーんふん」
最初は手慣らしに簡単なのをいくつか作っていたけど本番は別の編み方で、もっと華やかにしてみようとアジアンノットとミサンガを合わせたデザインにする。ばあばには釈迦玉結び、ライラママには几帳結びをつけようと思う。
プレゼント相手の笑顔を思い浮かべながら一つ一つ編んでいく。想像するだけで心が浮き立つ。喜んでくれるといーなあ。気に入ってくれるといーなあ。多分ふたりとも少々下手なものでも笑って受け取ってくれると思う。そのくらい心から大事にしてくれてるのをもうわかっている。だけど、だからこそ手を抜きたくない。ありがとうの気持ちだから、丁寧に。拙くても心を込めて作るのだ。
ゆっくりと小さな手が蔦編みのブレスレットを作る。赤子の後ろに寝転がり背もたれになりながら見つめるわんこの目には丸い指先に漏れる光が見えている。感謝の思いは祈りとなって赤子の魔力と共に一つ一つ編み込まれていく。
気づかれぬようそっとため息をついてしまうのも不可抗力というもの。何しろ本人は自覚なしに魔力を操っているのだから。このように微笑ましい願いの為ならば良いが、怒りや悲しみ、負の感情に任せて魔力を漏らすことになれば大惨事だ。後でよくよく叱らねばならぬ。
とはいえ今は愛し子の優しき願いが届くようほんの少し補助の魔力を添える。完成までは見守るのみだ。
「ふーぅ、できちゃ…」
完成したそれは見るものが見れば解る魔力のこもったブツと成っている。魔力を通して効果を発揮する魔道具ではないが、逆に常時発動している魔術具に近い。つまり表に出してはならないヤバいブツである。なんてモノこさえるんじゃこの赤子、とわんこが唸るのも納得のブツである。しかしこめられた願いはささやかな健康と開運という善意100%の代物。仄かに光るまじないブレスレットに本人はまっっったく気づいていない。
「んーちょっと疲れちゃ?おやしゅみい…」
「…がう」
仕方なし。寝ている間に隠蔽を施すことにする。この集落のニンフュには解るだろうが他に気づかれぬよう。
度々やらかす赤子のお陰でわんこの隠蔽術はめきめき上がってゆくのであった。
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