第19話 ぼく、感謝する。

あれ、ぼく何しに来たんだっけ?えーっと………???

「がうがぅ」

はっ。そ~だった、初めての薪拾いに西の森へ、で光の玉出して世界樹さんに出会っていい感じの枝をもらって浮かれてしまった。わんこに教えてもらわなきゃ忘れてたよ!

「薪拾わなきゃ!」

でもこの辺にあるの世界樹さんの枝かな?だとしたら薪にしちゃうの勿体無いような。え、ぼくのこの枝?大事に取っておくのですよ。勿論薪になんてしませんよ!

「世界樹さん、そろそろぼく行くね。さようなら」

わさわさ。

枝を振ってくれる世界樹さんにぼくも手を振り返してくるりと方向転換。東に向かって…東…えっと…どこ、東。


「がぅぅ」

「え?枝がどうかしt…枝ぁ!?」

わんこに促され手に持ったままだった枝を見るとさっきまでなかったはずの青い葉っぱがさきっちょに生えていてひらひらと招くように揺れていた。よく見えるように顔の前に寄せるとピタリと止まる。特に他に変化はないので元のように持つとまたひらひらとする。

「葉っぱ、生えちゃ」

「がう、がうがぅう」

わんこに枝を見せるように持ち替えたらなんかくたって葉っぱが萎れたようになった。あわわ。焦って目の前に掲げるようにしたら葉っぱはぶるんぶるん回転するみたいに揺れる。え?

「なにゃに?にゃにこえ」

「がうる」

「はぇ、東…?」

声に出して呟けばわんこの言葉通り東の方向に向かって葉がぴしっと立つ。わお。あってよかった以心伝心。おっきくなるにつれてわんこの思念が伝わりやすくなるみたいなんだよね。ほんとニンフュに生まれてよかった!女神様に感謝だよー!ひげ神にもちょっと。

「葉っぱしゃんもわんこもあいがちょー!」

勢い余ってわんこにギュッと抱きついてすりすりと頬ずりしちゃったけど、ちょっと照れくさそうな顔してるだけから大丈夫そう。葉っぱも心なし嬉しそうにぴるぴる震えている。

「じぇ、でわあらちゃめて東へ…!れっちゅらごっ!」


葉っぱが指し示す方向へてくてく歩き始めると光の玉がふよふよと戻ってきて足元を照らし出す。うん転けないように、あっ。

「んが」

間一髪顔面強打を避けれたのはわんこが服を噛んで捕まえてくれたおかげです。前方不注意ごめんなさい。ところでもう離してもいいと思うんだけど、あ、ハイ。リードよろしくポシェットの肩紐咥えたまま行くそうで。しばし歩いてもう一度転けそうになって慌てて手をついたところにちょうど良さそうな乾いた枝が落ちていたので、それらを薪として拾っていくことにしました。

ある程度まとまった量になった薪をポシェットから出した程よい長さのひもでくくって縛る。と言っても幼児の力ではがっちり縛るのは難しい。ぼくが今使える魔法は風・水・光で、ひもを結ぶには向いてないかも。仕方ないので端っこをわんこに咥えてもらって、反対端をぼくが持ってなんとか引っ張って崩れないようにくくった。

「はふぅ」

「がふ…」

どうにか形になったけどだいぶ疲れた。(当赤ちゃん比)

「じゃあ、帰ろっきゃ」

「ぐるる。がう」

「乗せてくれるの?でもおちゅかいなのに…」

「がう。がぅう」

「うーん、しょだね。しゅごく遅くなりしょう…」


わんこが言うには今のペースではとても今日中に帰れないということだ。正直ぼくもそう思うよ。迷っちゃったし寄り道して少し疲れてる。だけど初めてのお使い、自分の足でやり遂げたい気持ちもある。たくさん手を借りてる気もするけどね!それに、ポシェットに手を突っ込めばほら。

「テント、ありゅ」

「ぐるぅ……がふぅ」

渋々とだがわんこが頷いたのでそろそろ寝場所を考えたほうがいいかな?と周りを見る。目の前には細い木が二本立っていて地面は乾いて平らだ。木が密集していないのでここにテントを設置しても良さそうだ。

「うん、今日はここで野営でしゅ!」

「がっふぅ…」

そのわんこマズルででっかいため息とかホント器用だよね。

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