第10話 ぼく、踏み出す。
「あー、だぅあ!」
高速ハイハイを経て初めての立っちから、部屋の中をどうにか壁づたいで歩けるようになるとわんこに鼻先で支えられながら
ちなみに初めての立っちは誰も見てない早朝でした。生まれて六ヶ月くらい…大体半年かな?この世界の一年が何ヵ月とかわからないから多分だけども。多分早い方…普通の人にすれば、かな?
あとで気づいたわんこが悔しがって歯軋りしてたとか知らないでちゅ。怖いかお…いや知らないでちゅ。ライラママは目の笑ってない笑顔で非常にこわ、いえ知らないでちゅ。優しいママしか知らないでちゅ。ちらないもん。ぼく、赤ちゃんでちゅ。
と、いうわけで多少なり(…)歩けるようになったぼくはライラママとわんこ監督のもとお部屋の外へ踏み出すに至ったのである。
「あーぶ…」
部屋一周後ドアを開けて一歩で力尽きたとしても!一歩外へ!出たのである!今座ってるとしても!初めて部屋の外に、おんもに!ぜーはー。
「がふ」
わんこに呆れられてるけど気にしなーい。
「あらあら、おめめがきらきらね~」
「だぅぶ!」
赤ちゃん的にはドヤっていいとこだよね。
部屋の外は緑溢れる湖畔でした。周りに沢山聳え立つ大木に蔦が巻き付いて色んな花が咲き乱れているのに匂いはきつくなく爽やか。ぼくは花に詳しくないからわかんないけど沢山の種類の花の中で印象的なのは真っ白な花だ。特に花が好きだった訳じゃないんだけどこの白い花はとてもきれいに見えた。小さな花びらが沢山集まってふわふわと揺れる様が可愛い。近くにある一輪にそっと触れるとぽわ、と震えるような感触が面白く夢中になってつついて遊んだ。
しばらく花と戯れると部屋に戻り薄い布にくるまって眠った。気候が安定しているようであんまり暑くも寒くもないんだよね。疲れたような達成感でとてもグースリープだったよ!
そんな感じで数日、体力作りを兼ねて飽きもせず部屋を周回しては外の白い花と戯れる日々を送ることに。
景色も見えない(身長的に…)部屋の中でただひたすらよちよち歩くだけとかだと前みたく飽きて叫んでたかもしれない。掴まり歩くのにも大変力が必要な赤ちゃん的修行だけど、窓やドアを開けておけば歌うように声を出しながら歩くと風が花びらをつれてきてくれる。一周ごとにご褒美のように応援するように、白い花の匂いが舞う。
ぼくは一緒に育ったみたいな風が好きなんだけど、風もぼくを好きみたいで嬉しい。
あ、対抗するように唸るわんこの尻尾が逆立ってる。ふわふわが膨れてふっかふっか、なかなか良き。え、ライラママなんで両手にポンポン持って、いや、そんなチアリーダーみたいなのあんの?あーおむねがたゆんたゆん、応援あざっす、ハイ。いや、元女子だからそういうのは別に…可愛いのは良いですが。
おかげさまで掴まらなくても歩ける距離が大分延びて、部屋の中を一周するくらいは余裕で出来るようになりました。
いよいよ部屋んぽ卒業か…感慨深いものだな。
部屋の外に出て白い花と戯れるぼくの周りをくるくると花びらが舞う。風と一緒になってぼくも浮かぶ。楽しくて楽しくてひとしきり満足いくまで遊ぶと電池切れしたようで、目が覚めたら部屋の中でお説教でした。無意識に魔法使いまくってたらしい。わかりやすく怒った後で心配しすぎて拗ねだしたわんこに華麗に土下座を決めましたがなにか。ライラママはぶちギレモードでめっちゃ満面の笑みでいつもの緩い口調がなくなってすらすらとお説教されましたがナニカ。がくぶる。もう絶対に電池切れとか起こしません。意識は保つぞ!ということでこの電池切れ事件後、自分の限界を知る練習を始めたよ。自分を知るって大事。
ついでに限界値も伸ばすんだけどね!
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