第41話
*
赤西達が言い雰囲気になっている頃、高志達は部屋でゲームをしながら、赤西の帰りを待っていた。
「帰って来たらどうなったか聞かないとな」
「そうだな、俺たちにも迷惑を掛けたんだ、当然だな」
「俺は嫉妬であいつを殺してしまいそうだ」
「少しは友達の幸せを願ってあげようよ」
ボードゲームで遊びながら、三人は赤西の話しをしていた。
土井も三人の会話から、なんとなく赤西が何をしに行ったのかに気がつき始めていた。
「てか、流石に遅いな……のど乾いて来た」
「じゃあ、自販機で飲み物買ってこようか?」
そう提案したのは泉だった。
泉はそう言うと立ち上がって、財布を手に取る。
「みんな何が良い?」
「泉に任せるよ、悪いな」
「うん、じゃあ行ってくる」
「頼むね〜」
泉は財布を持って、部屋を出て自販機に向かい歩き始める。
歩きながら、泉はもしかしたらまた由美華に会えるのではないかと期待していた。
しかし、自販機の前に由美華は居なかった。
「ま、そんなに人生上手く出来てないよな……」
泉はそんな事を思いながら、自販機にお金を入れる。
「えっと……」
「あ、私はこれね」
「え?」
ボタンを押そうとした泉よりも先に、誰かが自販機のボタンを押してしまう。
一体誰が押したのかと泉が見ると、隣にはいつのまにか由美華が居た。
「また、飲み物買いに来てたの?」
「う、うん。ついでにみんなの分もね……」
「そうなんだ、大変だね〜。あ、これお金、勝手に押しちゃってごめんね」
由美華はそう言うと、泉にお金を渡して、飲み物の蓋を開けて飲み始めた。
「はぁー! お風呂上がりはやっぱり冷たい物だよねぇ〜」
ゴクゴクと由美華は購入した飲み物を飲む。
そんな由美華をぼーっと見ていた。
「ん? 私の顔をに何かついてる?」
「あ、いや! そ、そういう訳じゃないんだ、ごめん!」
「なら別に良いけど……あ! そんな事よりも! 泉君の好きな人、早く教えてよ!」
「え!? な、なんで?」
「気になるからよ!」
由美華は目をきらきらと輝かせながら、泉にそう言う。
もちろん泉は言える訳などない。
なぜなら、泉の好きな相手は目の前に居るからだ。
「ご、ごめん。本当に勘弁してくれないかな……」
「え〜! じゃあ、ヒント頂戴!」
「ひ、ヒント? た、例えば?」
「男か女かみたいな!」
「いや、男って答える訳ないよね?」
「いや、もしかしたら同姓愛者かもしれないし」
「僕は女の子が好きだよ!」
「私は女の子も好きよ!」
「そんなカミングアウトされても……」
どや顔でそう言ってくる彼女に、泉は苦笑いで答える。
「はぁ……紗弥は相変わらず八重君に夢中だし……私って男の子好きになれるのかな……」
そんな事を呟く由美華の隣で、泉は複雑な気分だった。
自分のことはそう言う対象で見てはくれないのだろうか?
泉はそんな事を考えながら、全員分の飲み物を買い終える。
「御門さんって……どんな人がタイプなんですか?」
「え? うーん……わかんないなぁ〜、強いて言うなら……優しい人かな?」
「そ、そうなんだ」
「まぁでも、誰だってつき合うなら優しい人がいいよね? 泉君もでしょ?」
「え? う、うん……ま、まぁ……」
泉はそう良いながら、由美華の事を考えていた。
由美華から見て、自分は優しい男なのだろうか?
そんな事を考えながら、飲み物を飲む由美華の横顔を見る。
「泉君なら大丈夫だよ」
「え? 何が?」
「好きな人、居るんでしょ? 泉君なら大丈夫だよ、優しいしカッコいいから、絶対にオッケー貰えるよ! だから自信持って!」
「あ、あぁ……ありがとう……」
その相手が自分自身であってもだろうか?
泉は複雑な感情で、ニコニコ笑う由美華の顔を見る。
「私はダメだなぁ〜、こんな性格だし」
「そんな事無いと思うけど……」
「え〜、じゃあ私の良いところ十個言って見ろよ〜」
「えっと、すごい一生懸命だよね?」
「え? マジで言うの?」
「いや、多分言えるけど……」
「なんだよぉ〜もしかして私の事大好きかぁ〜」
そう言ってからかうように言ってくる由美華。
そんな由美華の言葉に、泉は顔を真っ赤にして黙ってしまう。
「え……な、なんでそんなマジ反応……」
戸惑う由美華。
そしてそんな泉の表情を見て、由美華は気がつき、泉と同様に顔を真っ赤にする。
「な、なんだよぉ……そ、そんなは、反応したら……か、勘違いしちゃうぞ……」
「い、いや……か、勘違いじゃ……ないよ」
「うっ……ご、ごめん!」
「あ!」
由美華は顔を真っ赤にして部屋に戻って行った。
泉はそんな由美華の背中を見送る。
「……振られた?」
ごめん、その一言が泉の頭の中でやまびこのように鳴り響いていた。
そんな泉を置いて、逃げるように走り出した由美華は、ダッシュで部屋に戻り、部屋の前でうずくまっていた。
(い、泉君が……わ、私を……)
顔を真っ赤にしながら、由美華は先ほどの泉の顔を思い出す。
「う、う〜……」
考えたら急に恥ずかしくなってきた由美華。
うなり声をあげながら、部屋の前で小さくなっていると、部屋のドアが開いた。
「由美華? 何してるの?」
「さ、紗弥〜……私、わからないよぉ〜」
「え、え? きゅ、急にどうしたの?」
由美華は紗弥を見た瞬間、そう言って紗弥に抱きつく。
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