第20話
「ここでは私達が希望に応じた生徒の写真を撮って、販売している。購入には会員になる必要があって、紹介以外では会員にはなれない。また、更衣室の盗撮や女性とのスカートを隠し撮りした物などは、見つかったら色々と問題になるので、撮らないし販売もしない」
「普通の写真も売ったら色々問題になるんじゃ……」
泉は呆れつつも売られている写真に目を向ける。
すると一枚の写真に目が止まった。
「これって……」
「ほぉ、良いところに目を付けたな……それは二年三組の御門由美華の写真だ。一枚500円だ」
その写真は廊下を歩く由美華の写真だった。
泉はその写真を手に取り、思わず見とれてしまう。
「買うかい?」
「あ……いや……僕は……」
「買うなら今だぞ? 結構人気だからな、明日にはなくなる可能性もある」
「え……で、でも……」
泉が戸惑っていると、隣から高志が文句を言う。
「おいおい、これは流石にヤバいだろ? 学校に見つかりでもしたら停学だぞ?」
「ん、君は三組の八重君か……君にも見せたい物がある」
「ん、俺に? てかなんで、俺の名前知ってるんだ?」
「まぁ、細かい事は気にするな……君にはこの写真なんてどうだろう?」
「こ、これは……」
マスクの写真部の男子が高志に見せて来たのは、体操服姿の紗弥の姿だった。
恐らく体育の授業中なのであろう、準備運動をしている様子の写真だった。
その写真を見た高志は、声を出してマスクの男子生徒に文句を言う。
「ふ、ふざけるな!! こ、この写真を他の男子にも売ってるのか!!」
「そりゃあな、宮岡紗弥はかなり人気だからな。君とつきあい始めた後も衰えを見せない人気ぶりだよ」
「な、なんだとぉ……」
ぷるぷると肩を震わせる高志。
泉はそんな高志を見て、そりゃあ怒って当然だろうと思っていた。
彼女の写真が勝手に販売されているなんて、彼氏としては嫌であろう。
これは高志が怒り出すのではないだろうかと泉が考えていると、高志は再びマスクの男子生徒に向かって口を開いた。
「しゃ、写真はこれで全部か!」
「いや、今日はまだあるぞ?」
「ぜ、全部でいくらだ?」
「そうだな……宮岡の写真は一枚700円だから……今月は後八枚残ってるから5600円だな」
「全部貰おう」
「え!?」
高志の言葉に泉は思わず声を上げる。
そんな驚く泉の横で高志は財布から金を出す。
更に高志は金を渡しながら、マスクの男子生徒に忠告する。
「これから紗弥の写真は俺が全部買う! 他には絶対に売らないでくれ!」
「はいよ、こっちは金さえ貰えればなんでも良いよ」
「いやいや、高志! そこは文句を言ってやめさせた方が良いんじゃ……」
泉が高志にそう言うと、高志は悔しそうな表情で泉に説明する。
「俺じゃぁここまで綺麗に紗弥を撮影出来ない……それに、学校での自然体な紗弥を撮るのも難しい……ここはプロに頼むのが一番だ!」
「いや、プロでは無いと思うけど……それで良いんだ……」
肩を落とし泉が高志に呆れていると、更に優一までもがマスクの男子生徒に金を渡し始めた。
「今月分をくれ」
「はいよ」
「すまんな」
「優一も買うのかい?」
「ん……ま、まぁな……」
何やら歯切れの悪い優一。
一体誰の写真を買ったのか、泉は気になり優一に尋ねる。
「一体誰の写真を買ったんだい?」
「いや……だ、誰でも良いだろ……」
「優一は彼女がいただろ? これを彼女が知ったら傷つくんじゃないのかい?」
「べ、別に良いだろ、バレなきゃ良いんだよ……いや、俺の場合はバレたらもっとヤバイな……」
「なら買わない方が……」
泉以外の二人が写真を購入し、泉は手に持った由美華の写真をどうしたものかと考える。
幸い、二人は買った写真を確認しており泉の持っている写真には気がついていない。
「で……君はどうするの?」
「え……あ、いや………下さい」
「まいどー」
泉も自分の欲に負けて写真を一枚購入してしまった。
結局全員が写真を買い、写真をしまう。
教室を出た後、高志と優一は財布の中を見てため息を吐く。
「「はぁ……」」
「ため息吐くなら買わなきゃ良いのに……」
「いや……でも、俺に悔いはない!」
「高志は本当に宮岡さんが好きなんだね……」
「そう言えば優一は誰の写真を買ったんだよ? 芹那ちゃんに言いつけるぞ」
「関係ねーだろ! まったく、ほらさっさと帰るぞ!」
「よっと! どれどれ」
高志は優一が背中を向けた瞬間、優一のポケットから先ほど受け取っていた茶封筒を奪い取る。
「あ! こら返せ!!」
「嫌だね、浮気でもしてたら……って……あらぁ~」
「どれどれ? あぁ~、なんだ優一もちゃんと……」
高志と泉は茶封筒の中身の写真を見て、ニヤニヤしながら優一の顔を見る。
茶封筒の中には芹那の写真が複数枚入っており、高志と泉は優一の心情を察したのだった。
「返せ! それとニヤニヤするな!!」
「いやぁ~悪かったなぁ~、疑って……」
「優一が彼女と上手くいってる意味がわかったよ」
「やめろ! ニヤニヤしながら俺を見るな!!」
優一はそう言いながら、顔を真っ赤にする。
*
紗弥と由美華は二人で買い物に来ていた。
買いに来た物は修学旅行用の生活用品だった。
「タオルに……あとは……」
「下着でしょ~」
由美華はニヤニヤしながら紗弥にそう言ってくる。
二人で買い物に来たのは、下着も一緒に買うつもりだったため、男の高志に気を遣っての事だった。
「八重のために、エッロい下着買っておく?」
「か、買わないわよ!」
「え~、でも男は喜ぶわよ? 私もだけど……」
「た、高志はそんな変態みたいな趣味じゃないもん!」
「いやぁ~わからないよ? 意外と紐みたいな下着が好きかもしれないよ?」
「ぜ、絶対違う!!」
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