第3話
*
夜が明けて翌日。
高志はいつものように紗弥と学校に登校していた。
最早見慣れた光景になっている、高志と紗弥のツーショット。
最初は恥ずかしがっていた高志も慣れてしまい、恥ずかしいと感じることなどない。
「よう優一」
「ん……あぁ、なんだ高志か」
「どうした? そんなげっそりした顔で」
「いや……ちょっとな……」
教室につき、優一に声を掛ける高志。
優一はげっそりとした青い顔で机に突っ伏していた。
「なぁ……」
「どうした?」
「どうやったらSになれると思う?」
「一体お前はどうした?」
友人からの思いがけない相談に、高志は驚く。
なんとなく理由はわかる、恐らく優一の彼女の芹那のことで何か悩んでいるのだろう。
「いや、いっそドSとかになった方が良いのかと思ってな……」
「この数週間で何があった?」
「なんかな……あいつのキャラがな……」
付き合い始めてから日に日に疲れを増しているような感じの優一。
人の恋愛に口を出すのは、あまり良い事とは思わない高志だったが、この様子を見ては少し心配になる。
そんな時、学校のチャイムが鳴り、大石が欠伸をしながら教室に入ってきた。
「はぁ~……眠い……よし、ホームルーム始めるぞー」
高志は自分の席に着き、鞄を置いてホームルームを受ける。
「あ、その前に転校生を紹介するからなぁー」
「え? 転校生!?」
「ま、まさか!」
「先生それって!!」
「じょ……女子!?」
「男だ」
「「「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」
クラスの男子生徒の半数以上が、膝をついて泣き崩れる。
そんなに悔しがることかと高志は呆れながら思い、女子生徒はそんな男子生徒達に呆れていた。
「ちなみに先生ー、その転校生ってうちの馬鹿男子よりもマシ?」
「おいこら西城! どう言う意味だそれは!」
「そのままの意味よ馬鹿」
「なんだとぉ!!」
いつものように言い争いを始める朋香と赤西。
大石はそんな二人をいつものようになだめる。
「おい、入ってこい」
「はい」
大石のかけ声と共に入って来たのは、整った顔立ちの男子生徒だった。
そんな男子生徒にクラスの女子は視線を奪われ、男子はつまらなそうに余所見をし始める。 高志は何となく心配になり、紗弥の方に視線を向ける。
すると紗弥と目が合い、高志は思わず視線を反らす。
紗弥には高志の考えていることがわかっていたようだ。
紗弥はそんな高志を見て、嬉しそうに笑う。
「変な次期ですが、北海道から引っ越してきた泉陽大(いずみようた)です。よろしくお願いします」
さわやかな笑顔で挨拶をする泉。
女子はそんな泉に視線を離さず。
男子は早くも泉に敵意を持ち始めていた。
「お前ら仲良くしろよ~、特に男子、イケメンが来たからってふてくされるな~」
「「「うぃ~っす」」」
「ホントに大丈夫かよ……あぁー、おい八重」
「はい?」
「泉の面倒を見てやってくれ、このクラスの男子の中じゃお前がまともだ」
「まともって……まぁ、良いですけど」
大石からの提案で、高志は泉に学校の事を教えることになってしまった。
ホームルームが終わり、高志は泉の元に向かう。
「えっと、泉君だっけ? 俺は八重高志。よろしくね」
「うん、よろしく。面倒な役回りだと思うけど、色々教えてくれると助かるよ」
(なんだ、良い奴じゃないか……)
良い人そうな泉に高志は安心する。
顔立ちの綺麗な奴は性格も綺麗なんだろうなと、高志はクラスの男子生徒を見ながら思う。
「とりあえず、昼休みにでも校内を案内するからさ」
「ありがとう、一つ聞いても良いかな?」
「ん? なんだ?」
「さっきから、君以外のクラスの男子が、僕を凄い目で睨んでくるんだけど……僕何かした?」
「あぁ、大丈夫! ただ殺気を放ってるだけだから」
「それって大丈夫なの!?」
普通に言う高志だったが、クラスの雰囲気を知らない泉は驚愕する。
自分が原因なのだろうかと疑心暗鬼になりながら、泉は視線に怯える。
そんな泉に気がついた高志は、泉に一言尋ねる。
「泉君って、彼女とか居る?」
「え? いや、居ないけど?」
「おーい、お前らぁ! 泉君彼女無しだってよぉー!」
「え、急に何を……」
高志がクラスの男子に向かってそう言った瞬間、男子生徒達は放っていた殺気を引っ込め、笑顔で泉の元に駆け寄る。
「なんだよぉ~仲間かよぉ~」
「さては残念なイケメンだな~、茂木と一緒か!」
「追いコラ君たち! 僕は別に残念なイケメンなどでは……」
「あぁ、はいはいわかったわかった」
先ほどまで放っていた殺気はどこへやら、クラスの男子はフレンドリーに泉に近寄る。
「うちのクラスの男共は嫉妬深いだけで、根は良い奴らなんだ。まぁ、彼氏の居る奴には冷たいけどな……」
「そ、そうなんだ……」
引きつった笑顔を浮かべる泉。
きっと数日で慣れるだろうと高志は思う。
男子とは上手く打ち解けられそうな泉、そんな泉にクラスの男子は……。
「ところで泉君、君は女の子とは直ぐに仲良くなれる人かい?」
「え? いや、普通に仲良くは慣れると思うけど……」
「も、もしよかったら……合コンとかセッティング出来たりする?」
転校してきたばっかりの泉に、一体何を聞いているんだと呆れる高志。
泉もなんだか困っている。
そんな泉を助けたのは、クラスの女子生徒達だった。
「ちょっと馬鹿男子!」
「誰が馬鹿だ!」
「あんたらの馬鹿な質問のせいで、泉君困ってるでしょ!」
「なんだとぉ!?」
「ごめんね、泉君。大丈夫?」
「え、あぁうん、ありがとう」
「ちなみに泉君って……どんな子が好みだったりするのかな?」
「え……」
「追いコラこのビッチ女子共!」
「なんですってぇ!」
「お前らの質問も泉を困らせてるだろが!」
「そんな訳ないでしょ! 困ってないよねぇ?」
「え……あ、いや……」
クラスの女子と男子の言い争いに巻き込まれ、泉はまたしても戸惑う。
このクラスでは日常茶飯事の事だが、転校生の泉はなにがなんだかわからず、またしても戸惑う。
そんな泉に高志は一言。
「大丈夫、二日で慣れるよ」
「たった二日で!?」
先行き不安な泉であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます