第36話

 金閣寺に行った後、高志達は近くの店でぜんざいを食べていた。

 

「うん! 美味いな!」


「甘いなぁ……お茶くれ、お茶」


 高志達はぜんざいを食べながら次にどこに行くかを打ち合わせていた。

 優一はぜんざいの甘さに顔をしかめ、あわててお茶を飲む。


「抹茶の味が濃いねぇ〜美味しい〜」


「そりゃあ、抹茶味だからね。高志も食べる?」


「あぁ、じゃあ貰おうかな」


 高志と紗弥は相変わらず仲良くぜんざいを食べており、由美華はそんな二人をうらやましそうに眺めていた。

 そんな由美華をさらに泉が見つめる。


「………」


「気になるか?」


 ぼーっと、由美華を眺めていた泉に優一がニヤニヤしながら尋ねる。

 泉は顔を赤く染め、うらめしそうに優一の顔を見る。


「う、うるさいよ……」


「だめだぜぇ〜、顔が良くてもそんな奥手じゃぁ〜。もっとぐいぐいいかないと、あいつ振り向いてくれないぞ?」


「そ、そんなこと言われても……」


「さっきから、何話してるの?」


 優一と泉が話をしていると、前の席の由美華が二人に尋ねてきた。


「あ、いや……別に何でもないよ」


「本当にぃ〜?」


 疑いの視線を向けてくる由美華。

 泉は由美華に見つめられ、頬を赤く染める。

 そんな二人を見た優一は再びニヤニヤと笑いながら、由美華に言う。


「泉が御門は食ってばっかりだってよ」


「ちょっ!! 僕は別にそんな!!」


「え〜私そんな食べてないよ! 酷いなぁ〜泉君」


「だ、だから僕はそんなこと!」


 頬を赤く染め、泉は必死に由美華に弁解していた。

 そんな泉を優一はおもしがってみていた。

 そんな高志達の席に誰かが近づいてくる。


「やぁ、高志達もきてたんだね」


「ん? あ、倉島。おまえも金閣寺見てきた帰りか?」


 やってきたのは倉島だった。

 高志は立ち上がり倉島と話始める。


「これから高志達はどこに行くんだい?」


「えっと、これから北野天満宮に行くつもりだけど?」


「そうなんだ、偶然だね僕たちもこの後はそこに行くつもりなんだ」


「やっぱり、来年は受験だしな……神頼みもしておきたいしさ」


「そうだよね……」


 倉島は高志に言葉を返すと、ふと視線を一瞬紗弥に向けた。


「じゃあ、また後で会えたら」


「おう、じゃあな」


 軽く話をし、倉島は自分の席に戻って行った。

 

「なんか修学旅行中、あいつと会うのが多い気がするな」


 若干不思議に思いながら、高志は席に座り直し紗弥の方を向く。






 北野天満宮は学問の神様を祭っていることで有名だ。

 高志達は現在高校二年生、来年には受験を控えているため、天満宮に来る班も多い。


「来年は受験か……」


「優一は進路どうするんだ?」


「さぁな。でも多分、進学するにしても就職するにしても近場だな」


 寺を見ながら高志と優一は進路の話をしていた。

 再来年には卒業し、みんなバラバラの進路を進んでいく。

 高志はそんな事を考えると、なんだか寂しかった。

 

「ま、どうせまだ先の話だ。今は修学旅行を楽しもうぜ」


「それもそうだよな」


 高志達はお参りをした後、記念写真を撮り、記念におみくじを引く事になった。


「げっ……凶かよ」


「僕は中吉だったよ。高志は?」


 凶を引いてしまった優一がしょんぼりしているのを見ながら、高志は泉に言われ自分のおみくじを見る。


「凶なんて、優一は珍しいのを引くよな? まぁ、俺もどうせ中吉とか小き……」


 そう言い掛けて高志の言葉は止まった。

 不振に思った泉が、横から高志のおみくじをのぞき見ると、そこには「大凶」と大きく書いてあった。


「あぁ……いや、あの……」


 泉がなんと言おうかと迷っていると、いつの間にかやってきた優一が高志のくじを見て笑い始める。


「あはは!! 大凶っておまえすげーな! 確か大凶って大吉より入ってる枚数少ないんだぞ!!」


「ゆ、優一! あんまり笑っちゃ……」

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