甘え上手な彼女3 秋編

Joker

第1話

「なぁ、高志」


「なんだ?」


「俺たちの周りって金持ちキャラとか、お嬢様キャラが居なくないか?」


「いや、そんなキャラ滅多にいないだろ?」


「いや、こういうラブコメ物には一人くらい居るもんなんだが……」


「そんな金持ちがぽんぽん居たら、不景気なんて言わねーよ」


「だが、金持ちキャラは良いぞ? 海外旅行回とかパーティー回が作れる上に、なんか不都合があっても金持ちだから、金の力で解決出来る」


「お前は何を言っているんだ……」


「秋編! 始まります!」


「だから、お前は誰に言ってんだよ」








 涼しくなって来た九月の始め。

 夏休みボケも抜け、生活サイクルも戻りつつある今日。

 高志は今日も授業を受けていた。

 そんな今の授業は………。


「クラスマッチじゃこらぁぁぁぁ!!」


「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」


 野球部の繁村が大声を上げると、それに続いて他の男子生徒達が叫ぶ。

 そう、高志の学校では間もなくクラスマッチと言う、クラス対抗のスポーツイベントがある。

 種目は、ソフトボール、フットサル、バレー、バスケの四種目であり、勝利数に応じてクラスにポイントが入る。

 一番ポイントの多いクラスごとに順位を付けられ、上位三位までが表彰される。


「来たぞおまえらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」


「勝つぞぉぉぉぉ!!」


「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」


「男子うるさい!」


「少しは落ち着きなさいよ!」


 なぜここまで男子生徒が騒ぐのか、運動部の生徒はもちろんスポーツのイベントでテンションが上がるのはわかるが、なぜ運動部以外の男子も盛り上がるのか、それはこの学校の風習に原因があった。

 代々、この学校でカップルが急増する時が二回ある。

 その一つがこのクラスマッチなのだ。

 男子のいつも見れないカッコイイ姿に女子は恋心を抱く。

 だからモテない男子はやる気十分なのだ。


「ん……ふわぁ~……おまえら、出る種目は決まったか?」


「先生! 何を寝てるんですか! クラスマッチですよ! 優勝しましょうよ!!」


「わかったわかった、繁村お前はうるさい」


 クラスの担任の大石は居眠りから目覚め、繁村にそう言い教卓に立ち、黒板に書かれた出場メンバーを確認する。


「決まってるみたいだな、よし! あとは自習しとけ~俺は戻る」


 大石はそう言うと、出席簿を持って廊下に出て行った。


「ラッキー、自習だってよ」


「そうだな、そういえば優一」


 高志は前の席の優一に声を掛けられ答える。

 

「芹那ちゃんとは上手くやってるのか?」


「きゅ、急になんだよ!」


「いや、なんか気になってな」


「お前らみたいな感じではないが、まぁ……上手くいってるよ」


「なんだよ、その微妙な表情は」


 上手くいっているというわりに優一は複雑そうな表情を浮かべる。

 

「はぁ……あいつ、前よりも色々言ってきてさ………縛ってくれだの……叩いてくれだの……」


「あぁ………結構大変なのな……」


 優一の彼女の秋村芹那はドが付くほどのMだ。

 優一はそんな芹那の言動や行動に困り果てていた。


「何話してんのよ?」


「あぁ、御門か……ちょっとな」


 高志と優一の会話に入って来たのは、御門由美華だ。

 高志の彼女である宮岡紗弥の友人で、紗弥を溺愛する同性愛主義者。


「秋村がな……」


「あんた、まだ名前で呼んであげてないの?」


「名前どうこうの前に、あいつには性癖を直して欲しいぜ……」


「そう言えば紗弥は?」


「あぁ、何か書いてるわよ、終わったら八重君のところに来るって」


 由美華にそう言われ、高志は紗弥の机を見る。

 何やら一生懸命何かを書いていた。


「何を書いてるんだ?」


「気になるなら聞いて来れば? 彼氏でしょ?」


 不服そうに頬を膨らませて言う由美華。

 高志はそんな由美華の言うとおり、紗弥の机に向かう。


「紗弥」


「ん? 高志、どうしたの?」


「いや……何書いてるのかと思って……」


「ん? メンバー表だよ。私、実行委員だから」


「そういえば、そんな事言ってたな……」


「どうしたの? 私が居ないと寂しいの?」


「え! あ……いや……そ、その……」


 イタズラっぽく笑いながら、紗弥は高志をからかう。

 そんな紗弥の言葉に高志は顔を赤らめ、口ごもる。

 そんな二人を見ていたクラスの男子(彼女無し)は……。


「クソ! 死ね!」


「爆発しろ!!」


「海に沈めたろかっ!」


 殺伐とした雰囲気で、高志と紗弥の様子を見ていた。

 そんな中でも特に殺意を抱いて居たのはこの二人。

 野球部の繁村とサッカー部の赤西である。


「くそ! 見せつけやがって!!」


「俺たちだって必ず!」


 嫉妬に燃える繁村と赤西。

 そんな二人を呆れた様子で見るクラスの女子。


「男の嫉妬って醜いわね……」


「ホントね」


 そう言ったのは、クラス一気が強い女子生徒の西城朋香だ。

 赤西とは小学校時代からの腐れ縁だが、まったく馬が合わず、顔を合わせれば喧嘩ばかりだ。

「あんたらねぇ……いくらスポーツ出来ても、中身がそれじゃあ、女子は近寄って来ないわよ」


「いや、お前が近寄って来てもなぁ……」


「うるさいのよ!」


「あぎゃっ!?」


「安心しなさい、私がアンタを好きになる事なんて絶対に無いから」


「な、殴る必要ないだろ……」


 赤西の言葉が気に触ったのか、朋香は赤西の腹を殴り飛ばす。

 赤西は地面に這いつくばり、腹を抑えてうずくまる。


「う……うぅ……」


「おいおい、大丈夫かよ?」


「ど、土井……お前もあいつらを……見返してやろうぜ……」


「あぁ……俺は今回そう言うのいいや……」


「は?」


 卓球部の土井は夏の肝試しの後から、あまり彼女を欲しがったり、カップルを見て嫉妬することが無くなった。

 赤西はそのことが引っかかっていた。


「どうしたんだ土井……は! まさかお前も女か!」


「ちげーよ。ただ………叶わない恋をしたっていうか……なんかな……」


「まぁ、そうだよな。お前モテないし」


「うるせぇよ!」





 いつものように流れて行く高志達の日常……。

 今回はそんな高志達を取り巻く、クラスメイト達が主人公。

 ラブラブな高志達の居るクラスには、キャラの濃いクラスメイトが沢山います。

 今回は、土井、赤西、繁村の三人の日常を覗いて見ましょう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る