第28話


「ダメだ!! 絶対許さないからな!!」


「わかった、わかった。宮岡は極力見ないようにする」


「そういうことじゃねぇーよ!!」


 高志は覗きに断固反対だった。

 他の男子生徒に紗弥の裸を見せる事が一番嫌だったが、なんだか人として大切な物を失いそうな気がしたからだ。


「全くわがままな奴だ」


「どっちがだよ!!」


「で、これが風呂場の見取り図だ」


「聞けよ!!」


「フム………湯船がデカいな……」


「なんで見取り図なんて持ってるんだよ……」


 高志を放って、覗き賛成派の男達は作戦会議を開始する。

 全員いつになく真剣な顔で見取り図を見ながら相談を始める。


「俺、ゴーグル持ってるぞ? 潜って覗くってのはどうだ?」


「持ってきたのかよ……」


「湯が濁っていて見えないだろう」


「それじゃあ、やっぱり隙間を探すしか……」


「お前ら……そんなんだからモテねーんだよ……」


 高志はもう勝手にしろという感じで、着替えを用意し風呂に向かう用意を始める。

 




 高志達と別れた紗弥と由美華は、自分たちの部屋に来ていた。

 紗弥達は、同じ部屋の女子生徒達と修学旅行の写真を見せ合ったり、写真を撮ったりと修学旅行を満喫していた。


「紗弥は八重の写真ばっかりだねぇ~。あ、ツーショットもか」


「そうかな? そんなつもりはないんだけど?」


「いや、多いよ。まぁ気持ちはわかるけど」


「そういう朋華も……なんか赤西の写真がちらほらと……」


「き、気のせいよ!! あの馬鹿が騒ぐから、色んなとこに写ってるだけよ!」


 顔を赤くしながら話す朋華の事をクラスメイトの女子二人はニヤニヤしながら見ていた。


「由美華の写真は、なんか修学旅行って感じね~」


「まぁね~、良い感じでしょ?」


「あ! 後でこの泉君の写真頂戴!」


「え? うん、良いけど……泉君ってやっぱりうちのクラスで人気なんだ」


「うちのクラス以外でも人気だよ! カッコイイし、優しいし!」


「明日と明後日は大変だろうね~」


「え? どういうこと?」


 紗弥は同室の女子生徒二人に尋ねる。

 

「修学旅行だよ? 告白だよ告白ぅ~」


「告白?」


「うん、修学旅行で高まった思いを好きな人に伝える!」


「修学旅行で付き合うカップルも多いのよ~」


 ニヤニヤしながら紗弥にそう話す二人。

 しかし、ながら紗弥には関係無い。

 紗弥にはもう高志という彼氏がいるからだ。


「なんでも良いけど、そろそろお風呂行こうよ」


「そうね、ご飯の後じゃ人も多くなりそうだしね」


 由美華の提案で六人はお風呂の準備を始める。

 お風呂の時間は旅館内の自由時間ならいつ入っても大丈夫なのだが、食事と消灯の時間は指定されていた。

 六人は着替えを持って大浴場に向かう。


「あ、良かったあんまり人居ないみたいだね」


「まぁ、皆寝る前とかに入るんじゃない?」


「まぁ、だよね……って、何よ……」


「うーん……良い乳してるわねぇ~朋華ぁ~」


 クラスメイトの女子は朋華が服を脱ぎ始めた時、素早く背後に回り朋華の胸を揉む。

 

「な! 何すんのよ!」


「良いじゃん良いじゃん! 女同士だしぃ~、それにしても赤って……派手ね」


「うっさいわね!!」


 そんな二人を見ながら、紗弥は咄嗟に胸をタオルで隠し周囲を確認する。


「どうしたの紗弥?」


「え、あ……いや……由美華も同じような事をしてくるんじゃないかと思って……」


「えぇ~、私はしないよぉ~」


「じゃあ、その手の動きは?」


 紗弥にそう言う由美華の指は、クモの足のようにワキワキと奇妙に動かしていた。

 紗弥達は服を脱ぐと浴場に入って行く。


「おぉー本当に広いねぇー!」


「露天風呂ってのも良いよねぇ~」


 紗弥と由美華は湯船に浸かり、ゆっくりと体を休め始める。

 他にも生徒がいたが、そこまえ人は多くなく、ゆっくりと手足を伸ばす事が出来る。

 

「あぁ~いい気もちぃ~!!」


「そうねぇ~歩いてばっかりだったからきもちぃ~」


「あの馬鹿……お風呂ちゃんと入れるのかしら?」


 心配そうに呟く朋華、そんな朋華を見た由美華はニヤリと笑って朋華の側に寄る。


「そんなに赤西君が心配なら、混浴でもしてきたら~?」


「な! なんで私があんな馬鹿と混浴なんか!!」


「ふぅ~ん……でも最近ますます中が良いよねぇ~、たまに名前で呼んでるしぃ~」


「い、良いでしょ別に! 昔は名前で呼んでたし……」


「しかも、この前告白された時に、好きな人が居るって言って告白断ってたでしょう~? それってもしかしてぇ~……」


「う、うっさいわよ! ゆっくりさせなさいよ……」


「顔真っ赤だよ?」


「え! の、のぼせたのよ!!」


 顔を真っ赤にしながらそう言う朋華。

 しつこく付きまとってきた由美華の側を離れ、隅の方に避難する。


「朋華も素直じゃないねぇ~」


「照れてるのよ、あんまりからかっちゃダメよ?」


「いやぁ~八重に告る前の紗弥を思い出しちゃってさぁ~」


「わ、私はちゃんとハッキリ言ったもん……」


「う~ん! 紗弥は相変わらず可愛いなぁ~」


 由美華は紗弥にそう言うと、紗弥を背後から抱きしめ胸を揉み始める。


「ちょっ! ちょっと!! は、話して……あん!」


「可愛い声が出ましたにゃぁ~……うーむ、このおっぱいが八重の好きなようにされると思うと……」


「い、いい加減に……やん! は、離してよ……」


「いやぁ~……ちょっと無理だわ……」


 由美華は夢中で紗弥の胸を揉み続ける。

 そんな由美華を払いのけようと、紗弥は必死に由美華をふりほどこうとする。

 

「ほらほら~逃げられないよぉ~……あうっ!」


「やめなさいって」


「う~……何するのよぉ~朋華ぁ~」


「アンタが馬鹿みたいなことやってるからよ、少しはゆっくり……ってキャッ!!」


「おぉー! 意外に柔らかい……」


「意外って何よ! 意外って!!」


 由美華は今度は朋華の背後に周り、朋華の胸を揉み始める。

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